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(2001年4月17日付)
アジアの「正月」はひとつではない。ほとんどの日本人は太陽暦の1月1日を新年として迎え入れるが、中国はもちろん中国系住民(華人)の多い東南アジアでは、太陰暦による旧正月(2月中旬)が最も賑(にぎ)わう。そして、ビルマ暦を用いるミャンマーでは、乾期の終わり、猛暑のまっ只中の4月に正月を迎える。
今年の正月は4月17日。同13日から16日までの大晦日(おおみそか)は、ティンジャンという水かけ祭が行われ、一年で最も賑わう季節だ。過去の不浄を洗い流すために、女性は出会う男性すべてに水をかけ、男性もそのお返しに水をかけてもよいことになっている。
現地の人によれば、ティンジャンとは「転換」を意味するという。行く年を省(かえり)みて、新年を迎えるまでの数日を、功徳と罰の帳尻(ちょうじり)を整えるための時間に充てるのだという。水かけ祭の一方で、瞑想(めいそう)したり、パゴダに詣でたりと、静かなときを刻みながら、新しい年を迎えるのだ。
日本に伝えられるミャンマーの情報といえば、政治ものばかり。こうしたゆったりとした時間の流れなど、知る人は少ないだろう。ミャンマーを含めて、東南アジア各国をともに視察旅行した企業家らは口々に「いちばん落ち着く」「懐かしい」と漏(も)らした。溢(あふ)れる緑に癒(いや)され、視線を向ければほほ笑み返してくる子どもらに、彼らの多くは再び現地を訪れている。
昨今、政府と民主化勢力との間には雪解けムードが見られるようになった。中国以南、インド以東で最も大きいこの国もまた、戦前、日本の軍靴に踏みにじられた歴史を持つ。私たち日本人は、もっと等身大のこの国の姿を知る努力が必要ではないか。
(西田実仁・ジャーナリスト)