
(2000年4月11日付)
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格差なき情報化社会を目指して 公平性の確保へ総合政策が不可欠 |
テレビのデジタル化、インターネット、情報革命、IT(情報技術)、eコマース ……。こんな言葉が連日マスメディアに登場する昨今である。そして、特に目立つの は「インターネットが急速に普及しつつある」というマスコミの報道ぶりである。
確かに情報通信技術の発展は目ざましい。そのあまりの速さにわれわれは追いつい ていけない感じすらする。まさに情報革命時代の到来だ。この情報革命こそが情報産 業の発展を促し、ひいては低迷状態からなかなか脱しきれない日本経済に活を入れ、 再生に寄与し得るものとして大いに期待が寄せられている。
また、この情報革命によってわれわれは情報に対してより能動的に向き合うことに より、情報を目的に応じて効果的に活用するよう求められる、といっていい。
だが、ここではこうした問題はさておき、ITの急速な発展がもたらす情報アクセ スへのチャンスをいかにフルに生かし、活力ある新しい情報化社会を構築するか、更 にそれを経済再生へつなげていく上で乗り越えねばならないことは何か、冷静に考え ると課題は決して少なくないことに気づくだろう。
既にアメリカでは、インターネット社会にあってITの発展が社会にもたらす諸問 題をめぐりさまざまな議論が展開されている。いや、それだけでなく、情報の公平性 をいかに保証するかという視点に立った政策が打ち出されようとしている点に注目す べきである。遅ればせながら日本でも、だれもが等しくITの成果を享受し得るため に今、何が求められているか政治も行政も、マスコミもじっくり考えてみる必要があ ろう。
この点に関連して筆者の結論を先にずばり言わせてもらうなら、官民あげて情報革 命に立ち向かう総合戦略を策定し、実行を急げということである。
いつの時代でも、情報を制するものは社会、いや国家をも制するのである。しか し、その前提条件として大切なのは、情報は本来万人に等しく公開されなければなら ないという、情報の公平性である。
ところが、デジタルテレビにしろ、インターネットの普及にせよデジタルテレビ受 像機やパソコンを持てるものと持たざるものとの断絶は、放置しておけばますます顕 在化する恐れがある。その結果、情報を持てるものと持たざるものの差、つまり情報 格差の拡大をもたらす。
これは単にデジタルテレビやパソコンを効果的に使いこなせるかという、情報機器 を操る能力の問題だけでなく、貧者と富者の格差をますます広げることになりかねな いことをも意味している。
実はこうした情報格差の問題はいまアメリカでデジタル・ディバイドと呼ばれ、大 きな議論を呼んでいる。そのきっかけをつくったのは、アメリカ商務省が昨年発表し た報告書であったという。
情報産業の著しい発展は、アメリカ経済に予想外の繁栄をもたらした。だが半面、 ネット社会からの脱落者を生みつつある、と指摘されている。情報格差は更に都市と 地方の間でも拡大しつつあり、その深刻な事態が、報告書で浮き彫りにされたのだ。
クリントン大統領は、こうした指摘に敏感に反応し、情報の公平性確保のための総 合政策を打ち出した。
例えば都市・地方を問わずだれでも、いつでもパソコンを使って情報アクセスがで きるよう訓練を行う、その場合、訓練に協力する情報関係企業に対し税の減免措置を 講ずること、全米一千カ所にパソコン利用のための研修センターを設ける、これら一 連の施策実施のため来年度予算に三億八千万ドルを計上すること、などである。
既にロサンゼルスの公立図書館では市民がいつでも無料で使えるパソコン一千台が 整備されているというから驚きだ。情報格差が市民の間に拡大しないように、との行 政の配慮にほかならない。
「デジタル・ディバイド」に対し、「デジタル・オポチュウニティ(機会)」とい うことばがある。この二つは相対立するものととらえるべきではない。ITを効果的 に使いこなせてはじめて「デジタル・オポチュウニティ」が保障されるのであり、そ のためにこそ「デジタル・ディバイド」が生じないような政策が急がれるのだ、と考 えるべきだ。
最近、日本のある政治家が貧富の差に起因する情報格差が拡大しないようにするに はどうするか、これは基本的には民間レベルの問題だと思う、と私見を述べているの を耳にした。この問題に国、地方自治体がどこまで介入すべきかは議論の余地があろ うが、全く民間レベルの問題だと割り切っていいものだろうか。
ITそのものの効果的な利用法も含め、官民が果たすべき役割を明確にし、世界の 流れから取り残されることのないよう、新たな情報化社会構築へ向けての総合戦略を 打ち出すべき時ではないだろうか。
今日の情報革命と呼ばれる状況は、それほど重みのあるものだと思う。また、日本 型情報化社会の視点も忘れてはなるまい。
(久留米大学、東京工学院専門学校兼務講師)
略歴いまさと・じん 1934年、東京都生まれ。早稲田大学卒。時事通信社に入社 し、バンコク特派員、編集委員、「時事解説」編集長、資料室長を経て、90年退 社。編著に『先端技術の基礎用語』、著書に『マスコミ・情報の考現学入門』ほか