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寄稿論文

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在日外国人を巡る人権状況とマスコミ
関口千恵・ジャーナリスト

(2000年3月28日付)


「21世紀日本の構想」報告−−
   移民受け入れ社会とは程遠い実情

バングラデシュ人の配偶者をもって




■「排除と管理の論理」は根深く

 私の配偶者はバングラデシュ人で、一九八○年代以降に急増した、いわゆるニュー カマーの在日外国人である。別の言い方をすれば「出入国管理及び難民認定法(入管 法)」と「外国人登録法(外登法)」を二本柱とする外国人管理法令の直接的対象者 だ。

 法制度はおよそ、その運用実態を知らずして評価も論評もできない。日本人は、外 国人管理法令の直接対象者でないため、運用実態の把握からして困難である。だが、 中には例外もいる。外国籍者を配偶者にもつ日本人である。

 そのような立場からすれば、年明けに発表された首相の私的諮問(しもん)機関 「二十一世紀日本の構想」懇談会報告書には、革命的内容が含まれていると思う。

 すなわち、「外国人が日本に住み、働いてみたいと思うような」移民政策への転換 である。かつ、その直前には、法務省の「第二次出入国管理基本計画」が、現行の研 修・技能実習制度を大幅に拡充し、農業・水産加工業・ホテル業などへ力点を置くと 伝えられた(『朝日新聞』一月十四日付)。その後明らかにされたところによると、 従来の「排除と管理の論理」に対して「日本人と外国人との共生」が新たな理念だと いう。

 しかし、昨年の通常国会で成立し、さる二月十八日に施行された改定入管法と、四 月一日施行予定の改定外登法には、相変わらず「排除と管理の論理」が貫かれてい る。

 私は一年前、両法案が一括先議に付された参議院法務委員会から参考人招致を受け た。改定の骨子は、入管法が「不法在留罪の新設と上陸拒否期間の伸長」、外登法が 「指紋押捺(おうなつ)全廃」。

 両者は不可分一体で、オーバーステイや不法入国者のあぶり出し・排除(退去強 制)と、再入国阻止が目的だと私は指摘した。脳裏にあったのは、かつての自分たち を彷彿(ほうふつ)とさせる国際結婚当事者の嘆きだった。

■ 国際結婚のカップルを引き裂く

 私の配偶者が来日したのは十二年前である。手始めに日本語学校に入ったが、学校 が提出した書類に問題があって在留期限の更新ができず、オーバーステイになった。 オーバーステイでも婚姻はできるが、合法的な在留資格の取得となると全く別で、そ のままでは退去強制されてしまう。そうなれば、再入国の保障はなく、夫婦だろうと 長く引き離されることになりかねない。

 必死で探した結果、唯一の手段と思われたのが、法務大臣裁決による在留特別許可 (入管法五○条)だった。弁護士の間でさえ知られておらず、先例もなかったが、最 終的に勝ち取ることができた。

 以来、このパイオニアケースは、当事者や弁護士、市民団体に活用されてきてい る。だが、社会的認知を得たとはとてもいえず、何も知らずに引き裂かれた当事者は 少なくない。だいいち、退去強制の例外という位置付けは変わらず、「信号無視など 軽犯罪法違反とたいして変わらない」(入管問題に詳しいある弁護士)オーバーステ イに、自国民の家族的結合さえ断ち切る威力を認める制度は、依然として維持されて いる。

 この十年、退去強制後に再入国が可能となりうる外国人は、実質上、日本人の配偶 者に限られてきた。だが、五年ほど前から、「一年以上の懲役若しくは禁錮又はこれ らに相当する刑に処せられたことのある者」(入管法五条一項四号)という入国拒否 事由が、より厳格に適用されるようになった。オーバーステイの公判は一回で結審 し、懲役一年ないし一年半・執行猶予三年が普通。この有罪判決歴のみ重視されるよ うになったのだ。

■ 当事者の声を政策に反映させよ

 配偶者の押捺に同席したときの形容し難い不快さはいまも消えない。しかし、各紙 がことごとく持ち上げた押捺全廃などは、しないよりましという程度にすぎない。即 座に廃止すべきは、外登証不携帯に対する刑事罰と常時携帯義務である。

 そもそも、特別永住者(旧植民地出身者)と永住者には九二年に撤廃済みだった し、今回、行政罰に緩和(かんわ)したのは特別永住者だけ。血統主義で南米日系人 の入国・在留を簡易化した八九年の入管法改定と同様、「分断統治」推進策である。

 オーバーステイで逮捕される最大の契機は、外登証携帯を調べる警察官の職務質問 だ。つまり、常時携帯義務と刑事罰を残すとともに、不法在留罪で逮捕・摘発の利便 性を高め公判にかける。有罪判決を得たうえで退去強制すれば、再入国禁止期間の伸 長もあって半永久的にも拒めるという仕掛けなのだ。

 ただ、うがって見ると、冒頭に述べた外国人受け入れの前提要件(駆け引き)とし て二法が先行した意味合いもあるのではないか。その受け入れも、規制緩和とグロー バリゼーションから生じる高学歴専門職需要と、高齢化・少子化による単純労働者不 足の穴埋めで、欧米諸国の後追いでしかなさそうだ。

 何よりもいま問われるのは、足元の現状をどう認識するかだろう。そのためには当 事者の声を直接政策に反映させるような制度が創出されねばならない。(ジャーナリ スト)

略歴

 せきぐち・ちえ 1962年東京生まれ。早稲田大学法学部卒業後、フリーランス に。『法学セミナー』『世界』『週刊金曜日』などの各誌で、内外の人権問題を幅広 くカバー。特に在日外国人の人権については、ボランティアで相談を受けるととも に、地方自治体・法律家団体・市民団体での講演を多数行う。著書に、国際結婚のパ イオニアケースメーキング体験をつづった『在留特別許可』(配偶者との共著、明石 書店)など。