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寄稿論文

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20世紀の20大ニュースから占う21世紀の世界

滝沢荘一
富山国際大学教授

(2000年2月8日付)




引き続き「アメリカの世紀」となるか!?

覇権国は必ず挑戦される「歴史の法則」



1位は「広島、長崎への原爆投下」

 来年一月一日から始まる二十一世紀の世界は、いったいどんな世界なのだろうか。 どんなに素晴らしいことが、あるいは逆に、どんなに恐ろしいことが私たちを待ち受 けているのだろうか。未来がどうなるかを予測するためには、まず、二十世紀がどん な時代であったかを振り返っておく必要があるだろう。過去と現在に大きく制約さ れ、その延長線上にあるのが未来だからだ。

 米国のAP通信は昨年暮れ、同通信加盟の世界の報道機関七十一社の投票によっ て、二十世紀の二十大ニュースを選定した。一位になった「広島、長崎への原爆投 下」から、二十位の「イスラエル建国」までを年代順に並べ替えてみたのが、ここに 掲げた年表である(=別掲)。これを見ると、二十世紀がどんな時代であったかがよ くわかる。

20世紀の20大ニュース(AP通信)

西暦順位  事 柄
19038ライト兄弟の飛行機発明
190511アインシュタインの特殊相対性理論
19147オーストリア皇太子暗殺で第1次大戦開戦
19172ロシア革命
19289ペニシリンの発明
192914ウオール街の株暴落
19393ナチス・ドイツのポーランド侵攻で第2次世界大戦勃発
194118日本の真珠湾攻撃
19456ナチス・ドイツの敗北
194516国際連合の設立
19451広島、長崎への原爆投下
194610コンピューターの発明
194820イスラエル建国
194919共産党の中国支配
195717ソ連の人工衛星打ち上げで米ソ宇宙開発競争
196312ケネディ米大統領暗殺
19694米国宇宙飛行士の月面歩行
198113エイズウイルス出現
19895ベルリンの壁崩壊
199115ソ連崩壊

 二十世紀を総括する言葉としてよく目にするのは、「戦争と革命の時代」とか、 「“ファウスト的衝動”(自我を無限に拡大しようとする衝動)によって導かれた世 紀」といった言葉である。

 第一次・第二次大戦、ロシア・中国革命、東欧民主化革命などに注目すれば、確か に「戦争と革命の時代」だった。また、ライト兄弟の飛行機発明で空へ舞い上がった 人類が、やがて宇宙を飛行、コンピューターの発明がIT(情報技術)革命へとつな がってゆく技術革新の原動力になったのは、間違いなく人類の「無限への衝動」だっ た。相対性理論が核分裂の発見や原水爆の開発につながった事情も同じである。

古代ローマ帝国以来の繁栄を謳歌

 だが、別の観点から年表をにらんでいると、二十大ニュースのすべてに、直接の当 事国として、あるいは何らかの関係国として、米国が密接にかかわっていることに気 付く。詳述する紙幅はないが、「世界の田舎」だった米国は、第一次大戦を経て世界 的強国となり、第二次大戦後、米ソ二大超大国の一つとなった。

 それからほぼ半世紀、米国は資本主義と民主主義を世界に広げようと悪戦苦闘し、 ソ連の崩壊によって、望み通り、自由な市場と民主主義の支配を実現した。米国の資 本主義的制度・慣行を世界全体に広げようとする「グローバル化」という言葉が、世 界の合言葉になりつつある。つまり、軍事力でも経済力でも思想・文化の面でも、二 十世紀はまさに「アメリカの世紀」だったのである。

 米国の政治学者ポール・ケネデイは一九八七年のベストセラー『大国の興亡』で、 手を広げすぎた米国は凋落(ちょうらく)しつつある、と説いた。世界は冷戦期の二 極世界から多極世界へ変わると考えられた。ところが、ソ連崩壊以後の九〇年代は米 国にとって「絶頂の十年間」だった。クウェートでもコソボでも米国は圧倒的力を発 揮した。経済面でも米国の「独り勝ち」が続き、クリントン米大統領は一月二十七日 の一般教書演説で「我々はニューエコノミーを確立した」と自画自賛している。

 IT革命の結果、米国は「資本主義に不況はつきもの」という従来の景気循環論を 打ち破り、米国の好況は無限に続く――というのだ。古代ローマ帝国以来、これほど 大きな軍事的、経済的、文化的力を振るった国は存在しない。二十一世紀を迎えよう としている今の世界は、多極世界ではなくて、単極世界なのである。

確実なことは次も「激動の世紀」に

 では、二十一世紀も引き続き「アメリカの世紀」となるのであろうか。

 昨年十二月、「最近の国際情勢には、否定的な傾向が現れている」と米国による 「一極支配」のけん制を狙った共同声明を出した中国・ロシアを含め、現在、世界に は、米国に本気で挑戦しようという国も国家連合も存在しない。

 したがって、単極世界は少なくとも二、三十年は続くとみて間違いないだろう。

 だが、世界は揺れている。「米国のバブルは必ずはじける。ニューエコノミーな ど、まじめに受け止めないほうがいい」(ガルブレイス・ハーバード大学名誉教授) という批判。世界貿易機関(WTO)や世界経済フォーラムの会議に詰めかけるデモ 隊の「グローバル化反対!」の叫び。資本主義自体が秘めている強大な破壊力に安定 を脅かされている東欧諸国や発展途上国。広がる貧富の格差……。

 覇権を求めるいかなる国も、自らに敵対する勢力の連合が誕生するのを避けること はできなかった。ポール・ケネデイの主張は短期的予測としてははずれたが、米国は いつまでも、この「歴史の法則」を無視することはできないのではなかろうか。

 人間に、未来を確実に予知することはできない。我々が今、当然のように利用して いるビデオ、電子メール、原子力といったものを、百年前にだれが想像しただろう か。だが、ひとつだけ、確実なことがある。二十一世紀の世界もまた、二十世紀に勝 るとも劣らぬ「激動の世紀」になるに違いない、ということだ。 (富山国際大学教授)



略歴  たきざわ・そういち 1936年、東京生まれ。東大卒。東大新聞研究所修了。毎 日新聞社整理部、外信部、編集委員などを歴任、88年から熊本大学法学部教授、9 8年から現職(人文学部、国際政治専攻)。著書に『湾岸戦争にみる現代政治』『S DI―幻想と現実』など多数。訳書に『未来を生きる―トインビーとの対話』など。