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(2006年8月2日付)
「20年後の黄金時代」へ因を与えたい |
20世紀を代表する音楽家レナード・バーンスタインの提唱で1990年に始まった国際教育音楽祭「パシフィック・ミュージック・フェスティバル(PMF)」が、今年も北海道・札幌を中心に繰り広げられ、明3日の東京・サントリーホールでのPMFオーケストラ公演で有終の美を飾る。ここでは、2年ぶりにPMFの首席指揮者として来演したマリンスキー劇場芸術総監督ワレリー・ゲルギエフ氏の合同インタビュー(7月30日、札幌・芸術の森で)の要旨を紹介する。(野山智章記者)
“21世紀の巨匠”の名声をほしいままにするゲルギエフ氏の本拠地マリンスキー劇場は、帝政時代からの古い歴史を持つロシア文化の殿堂。ソ連崩壊後の混乱期を乗り越え、今や、彼が率いるオペラ、バレエ、オーケストラは世界に冠たる実力を認められている。かつて、テレビ番組「希望を振る指揮者 ワレリー・ゲルギエフ」を制作した小林和男・NHK元モスクワ支局長は本紙への寄稿で「この催し(PMF)に彼ほど相応しい人はいない……若い人に勇気を与え、育てる指揮者だからだ」と記している。
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――2度目のPMF参加ですが……。
私は夏に行われる音楽祭に参加するのが好きで、フィンランド・ミッケリ音楽祭やロシア・白夜の星音楽祭などの国際音楽祭の芸術監督を務めています。とりわけ、美しい自然を舞台にした音楽祭には心惹かれます。湖や森や透きとおった空気の中で、素晴らしい音楽が奏でられると、人々は幸せを感じることができるのではないでしょうか。都会の喧噪にもまれた人々にとっては、心の休養にもなると思います。
ヨーロッパの音楽祭では参加者も欧米の若者が中心ですが、PMFの特徴は、アジアの若い音楽家の参加が多いことですね。日本、韓国、中国、台湾、そしてオーストラリアからのアカデミー生……大変に面白いと思います。PMFは、綿密かつ丁寧に組織された音楽祭という印象を受けます。ウィーン・フィル、ベルリン・フィルの奏者らを中核とする教授陣をはじめ、規模も国際的で、プログラムが充実していますね。
――アカデミー生には何を期待しますか?
私は27日に札幌入りし、昨29日の公演を皮切りに5回のコンサートを指揮しますが、彼らには各回の公演を通じて“成長”を見せてほしい。それが一番の目標だと思っています。
――教育音楽祭を行う意義についてどう思われますか?
PMFの意義は、参加した100人余の若者が20年後に「音楽家としての黄金時代」を迎えられるようなチャンスを提供することです。そのための因をつくることです。世界のどの町で活躍するにしても、20年前にPMFで得た貴重な経験を、自分の芸術活動に生かせばよいと思います。
創設者バーンスタインは、“残された人生の時間を教育に捧げたい”と言われましたが、私には、その気持ちが痛いほどよく分かります。バーンスタインの偉大さは、彼の天才的な才能を、出来上がった一流のオーケストラにではなく、若い、これからの音楽家に分け与えようとしたことです。
私自身、素晴らしい師匠から教わることができました。年齢を重ねて分かってきたことは「誰かから教えを受け、それを誰かに伝えていくことは人類の法則ではないか」ということです。多くのことを得た人間は、その多くのことを次世代に伝えていかねばならないのです。
もちろん、音楽家は、会場に足を運んでくれた聴衆に自らの得たものを伝えることを第一義とすべきですが、若い世代に伝える責任も痛感していました。そういう思いがあったので、2回目のPMF首席指揮者のお話があったときに、「喜んで」と返事をして、札幌入りしたわけです。