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寄稿論文

インターネットに革命的な第2の波 『Web 2.0』『ユビキタスネット』

(静岡県立大学教授・前坂俊之)

(2006年6月13日付)


情報主権が個人へシフト

新文明を切り開く“万能の巨人”に



通信技術の三位一体の発展

 インターネットやケイタイが生まれて約10年たちましたが、今、革命的といってよい第2の変化の波が押し寄せてきています。この10年のインターネット、コンピューター、コミュニケーション技術の三位一体の驚くべき発展と、世界的な利用人口の普及が引き起こした『Web爆発』現象が到達した第2ステージとは現在、米国では盛んに議論されている『Web 2・0』であり、日本でいえば『ユビキタスネット社会』なのです。

 10歳となったインターネットは新しい文明を切り開く万能の巨人に成長しました。この間、目にしたWebのスピード成長ぶりは次のようなネット、Web現象に現れています。

  1. 情報処理スピードはブロードバンド化でテキスト中心から動画へシフト
  2. ホームページも専門技術の必要なものから誰でもできるブログ(簡易ホームページ)へ
  3. 情報検索もダブルクリックからグーグルでの検索へ
  4. ネット広告の普及が検索連動広告、アフリエイトなどによりページビューからクリック単価へ
  5. テレビから『ギャオ』のようなネットテレビ、DVD(デジタル・ビデオ・ディスク)からiPodの普及
  6. 端末もパソコン中心からケイタイへ、さらにICチップ(超小型コンピューター)へ
  7. 携帯電話からiモード、カメラケイタイからおサイフケイタイへ、ワンセグへ
  8. 株のネット取引もパソコンからケイタイへ
  9. あらゆる商品にICチップを取り付けてトレーサビリティー(生産履歴管理)を行う――など、新たなサービスが次々に生まれています。
 これが「Web 1・0」から「Web 2・0」への移行であり、Webが社会、経済の共通基盤、プラットホームの機能を高めて、あらゆる分野にユビキタスネットの輪が広がり、リアルの世界も巻き込んだ大変化を生んでいます。

開かれたメディアの誕生へ

 日米のネット文化は相違しており、米国が次世代インターネット、Web環境でデザインアップしていくのに対して、『ケイタイ』が著しく発展した日本では、ケイタイを中心に何でもできる万能のサービスをイメージしています。

 その先にあるのが日本では「いつでも」「どこでも」「だれとでも」「どんなものとでも」「どんな端末からでも」スピーディーに、自由自在に情報へアクセスできる「ユビキタス社会」です。

 坂村健東大教授のトロンプロジェクト、ICチップをあらゆるものにつける『どこでもコンピューター』のコンセプトと同じものですが、『Web 2・0』がサービス、ソフト中心の考えなのに対して、「ユビキタス」がネットワーク、ハードに傾いているところに、日米の違いがあります。

 この第2ステージで一番注目されるのは情報が動画、ビデオ中心に大きくシフトしており、誰でも簡単に安くできるブログで動画を発信できるようになったことです。

 この結果、手のひらに入る小型ビデオで取材して、即座に送・配信できるマイテレビが誕生し、放送と通信の融合が個人の中で加速し、従来のマスメディアとしてのテレビ局から個人の放送局、マイテレビ局が可能となってきたことです。

 この点を創業10周年でこのほど来日した米ヤフー社の創業者のジェリー・ヤンは「最初は『The Web』というひとつの大きな塊だったが、今ではWebのパーソナル(個人)化で『My Web』に変化してきた。今後は『Our Web』と呼べる存在になっていく。オープンなサービスを通じて、コンテンツ(情報の中身)の作成者や広告主、顧客、消費者がすべて繋がれるようなオープンなメディアを生み出していきたい」と講演会で述べています。

快適・安全・安心サービスを

 もうひとつの重要な点は『Web 2・0』『ユビキタスネット』が電気や水道のように当たり前のインフラとなった現在、コンテンツこそが何よりも重要になってくるということです。

 今後、日本が世界に先立ってむかえる少子高齢社会において、いろいろな問題を解決するためにもユビキタスネットほど有効な手段はありません。

 お年寄りの介護、医療、福祉などについて遠く離れた場所からでもICチップやセンサー、ケイタイ、カメラ、ビデオなどをユビキタスに利用することによって人手を省いてリアルタイムに、かゆいところに手が届くサービスが可能となります。

 また、子供たちの安全、安心の通学や事故防止のために、ICチップをランドセルなどにつけて街角の自動販売機をカメラ付きの見回りロボット代わりに使って、保護者のケイタイに子供たちの映像が送られるなど、さまざまなコンテンツが生まれています。

 ユビキタス社会では、便利で、快適、安全で安心なサービス、コンテンツを「いつでも」「どこでも」「誰でも」容易に利用できることが大事です。

 少子高齢化社会の到来は日本だけではありません。10年ほど遅れて中国をはじめ各国が同じ問題に直面します。

 いち早くこうした問題に対応したコンテンツやソフトを開発すれば世界に先駆けて通用するりっぱな輸出品を作ることができます。

 かつて日本のお家芸であったデジタル家電製品の国際競争力も年々低下している今こそ、ユビキタスコンテンツや、ソフトの開発にシフトすることが、官民ともに緊急に求められているのです。

 (静岡県立大学教授)

略歴

 まえさか・としゆき 1943年、岡山県生まれ。毎日新聞記者を経て93年から静岡県立大学教授(マスコミ論専攻)、著書に『メディアコントロール』(旬報社)、ユビキタスの最新動向を取材した『ユビキタス・コンテンツビジネスのすべて』(PHP研究所)がある。