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メディアのページ

寄稿論文

オンラインは新聞にとって代わるのか

(米パシフィック・リサーチ・インスティチュート所長・高濱 賛)

(2006年3月28日付)


主要紙も経営不振で記者解雇

急成長とげるオンライン・ニュース



部数は減少 株価は下がる一方

 アメリカの新聞の発行部数減少が止まらない。収入源である広告料は減り続け、新聞社の株価は下がる一方。有力ブロック紙を傘下におさめ、全米第2の規模を誇ってきたナイト・リーダー社は、経営不振を理由に、3月には中堅メディアのマククラッチー社への身売りを決定した。

 コスト削減の手っ取りばやい手段は、記者の数を減らすことだ。昨年来、解雇された記者は、「ニューヨーク・タイムズ」で60人、「ロサンゼルス・タイムズ」では85人と主要紙といえども厳しい状況に置かれている。

 メディア問題のシンクタンク、ポインター・インスティチュート(フロリダ州セント・ピータースバーグ)は毎年春、「米ジャーナリズム年次報告」を公表している。全米の新聞、雑誌、テレビ、ラジオ、オンラインを十数人の専門家が定点観測し、それの結果を17万8000語におよぶ膨大な報告書にしている。その2006年版が3月12日に出た。激変する米メディアの1年を回顧して同報告書は次のように結論付けている。

 「(新聞、雑誌などの)プリント・メディアは厳しい局面に立たされているが、決して消滅したりはしない。今、ジャーナリズム界で何が起こっているのか。一言で言えば、一般市民がどのような手段で世界中で起こっている出来事について知り、また知ろうとしているのかという点について衝撃的な変化が生じているということだ」

 オンライン人口の急速な増加の波に乗って躍進を続けるオンライン、ブログ(=Web Logの二語が合わさってできた「かばん語」)、ポータルサイト。これら「アグリゲイター」(Aggregator=ニュース収集者)が従来型ニュース伝達者であるジャーナリストの「職場」を侵食し始めたと、同報告書は指摘している。

ヤフー、AOLなどシェア伸ばす

 こうした傾向は2005年の1年間でより加速した。ヤフーやアメリカン・オン・ライン(AOL)、グーグルといったオンライン・ジャーナリズムが「アグリゲイター」としての実力を一段とつけてきている。

 昨年1年間にヤフーからニュースを得ていると答えた一般市民は、2410万人に達した。全米日刊紙発行部総数が5463万部であることからもその急成長ぶりがわかる。

 だが、そのヤフーといえども、ワシントンや東京からの第一報は、APやロイターといった通信社やCNNなどからのニュースを転載しているにすぎない。まだまだニュースの取材者ではなく、単なる収集者であり、伝播者なのだ。ニュースの分析や解説は自社でできるとしても「正確な生ニュース」は、網の目のように張り巡らされた従来型メディアの取材網に頼らざるをえない。いくらポータルサイトといえども、これらニュースを受け売りしているにすぎない、との厳しい指摘もある。

 米国の一般市民が05年の1年間にどのオンラインに一番アクセスしたか。ニールセン調査機関によれば、前述のヤフー(2410万人)についで、第2位だったのは、24時間ニュースのケーブル・テレビ、MSNBC(2340万人)、CNN(2200万人)だった。新聞社系ではガーネット社(1620万人)、「ニューヨーク・タイムズ」(1100万人)が奮闘している。

報道の旗艦としての新聞の役割

 新聞各社も取材面、編集面でオンラインに力を入れている。筆者の友人、ハリウッド産業取材を担当する「ニューヨーク・タイムズ」のアンドルー・ポラック記者などは、「本紙の締め切り時間が過ぎても、事件の進展があれば、オンライン用に逐一記事を送るように指示されている。ここ1、2年まるでオンライン記者になったようだ」と苦笑いしている。

 新聞各社がオンライン部門でどのくらい収益を上げているのか。ボレル・アソシエーツ社によれば、ナイト・リーダーは、04年には全収益の3・7%(03年は2・5%)、「ニューヨーク・タイムズ」は3・3%(同2・6%)、「ワシントン・ポスト」は3・1%(同1・5%)、「ロサンゼルス・タイムズ」は2・1%(同1・5%)と軒並み増えている。新聞の発行部数は年々減っているのに反して、オンライン部門は徐々にだが、安定した収益を上げ始めていることがわかる。

 コロンビア大学ジャーナリズム大学院前院長のトム・ゴールドスタイン氏は、米メディアの現状をこう総括する。

 「サイバースペース時代に入り、一般市民のプリント・メディア離れが急速に進んでいる。輪転機だけに固執している時代ではなくなってきた。現場の優秀な記者が書いた優れた記事をプリントするだけでなく、オンラインで流す、テレビ・ラジオで流す、あらゆる媒体を通じて一般市民に伝えることが不可欠になってきた」

 そうすることで、「メディア財産である新聞は死滅することはないし、総合メディア集団のフラッグシップ(旗艦)として生き続ける」と同氏は力説する。

 新聞各社の経営陣の手腕がいよいよ試される時代になってきたことだけは間違いなさそうだ。 (米パシフィック・リサーチ・インスティチュート所長)


略歴

 たかはま・たとう 1941年、東京都生まれ。米カリフォルニア大学(バークレー校)卒。67年、読売新聞社入社。ワシントン特派員、政治部次長、主任研究員等を歴任。95、97、98年に、母校のジャーナリズム大学院客員教授、上級研究員。99年から現職。著書に『アメリカの歴史教科書が教える日本の戦争』『捏造と盗作』など。