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寄稿論文

特別寄稿  『大転換――帝国から地球共同体へ』

(本紙客員論説委員 デイル・ベセル)

(2006年1月24日付)


対話と協力に基づく平和の文明を

池田SGI会長の21世紀ビジョンと合致


コーテン博士、3年余の労作

 『大転換』は、2006年5月に発刊予定の新刊書で、著者は、国際的に著名な作家・社会運動家のデビッド・コーテン博士である。

 本稿の目的は、同書を手短に論評すること、そして私がなぜ対話と協力に基づく新たな平和の文明の創出に同書が重要な貢献をなしうると信じるのか、その理由を説明することにある。だが、まずはその背景となる事情から述べていこう。

 昨年10月、インタナショナル大学アジア・太平洋センターは、ハワイのいくつかの地方組織と協力して、コーテン博士が3年余の歳月をかけて執筆してきた『大転換――帝国から地球共同体へ』という題名の著書をテーマとした研究会、講演会、諸会議を1週間にわたって開催したのである。

 この1週間の活動のための計画と準備は、1年前から着手されていた。その一環として、コーテン博士の既刊書を読んで論じ合う研究グループも結成されていた。それらの既刊書には、いまでは有名な『グローバル経済という怪物』(訳注1)や、共著者・発刊者としての博士の重要な著作『経済のグローバル化に代わる道』(訳注2)など、初期の作品群が含まれていた。

 この研究グループの作業と、1年間におよぶ計画・準備の結果、1週間にわたった一連の諸会合には、500人以上の人々が積極的に参加した。どの会合も胸を躍らせるものとなり、「大転換」を成し遂げて新たな平和の文明、すなわち真の「地球共同体」を創り出すための人類家族の能力への希望と確信をはぐくむものとなった。

 しかも、これは計画になかったことだが、コーテン博士がハワイに到着する1週間前にすでに『大転換』を脱稿し、出版社に出稿していたことも判った。そのことがさらにお祝い気分を高め、参加者は興奮にみちた1週間を経験することとなった。

 この著作『大転換』は、創価学会の会員や聖教新聞の読者にとって、とりわけ興味深いものだろうと私は思う。なぜなら同書が生命を尊重し平和と共存を求める、池田大作氏と創価学会の21世紀文明のビジョンと、じつに論調が合致しているからである。

牧口「人生地理学」の先見性

 本書でコーテン博士は、一つの命題を提示している。それは、平和や環境保護から人種差別主義や性差別主義にいたる、世界共同体がいま直面している喫緊の諸問題は、みなその根源を「帝国」の文化と制度に遡ることができ、それらは「帝国」を過去のものとすることによってのみ解決が可能だ、という命題である。

 それゆえ、的確な解決を求めようとすれば、税務政策や教育政策、各種予算、戦争、通商協定などの細目を論じるだけでは十分でない。われわれは「地球共同体」の構成員として、いま直面している手ごわい諸問題の根本原因に取り組まねばならない。

 そのためには、われわれは「より大きな器、つまり、協調(パートナーシップ)形成の原理に根ざした、生命重視の意味・安全保障・繁栄の物語が提示するフレーミング・ビジョン(枠組みとなる未来像)」を必要とする。

 「帝国」の物語は統治の文化を形成し、協調の可能性を拒むのに対して、「地球共同体」の物語は協調の文化を育成し、「帝国」が疎外や不安、そして虚偽的で排他的な繁栄を生み出すという現実を暴く、とコーテン博士は示唆する。

 続けて博士は、自らの信念をこう述べている。「生命への愛情に根ざした思いやりのある共同体こそ、まさに生命の本質から言って、人類の繁栄と安全と本来の意味を実現するための不可欠の前提条件である」

 牧口常三郎の古典的著作『人生地理学』(1903年刊)を読んだことがある人ならただちに、この見解はまさに牧口が当時の日本国民に伝えようとして、その人生の大半を費やしたところのものであることに気づくだろう。

 事実、牧口はこう記していた。その洞察を同胞に語りたいという抑えがたい衝動があまりに強くなったため、「それらは私の全存在を占領し、他に何事も考えることができなくなり、生計を立てるための仕事すら手につかなくなった」(訳注3)と。

 実に、この内面の衝動に応えんがため、そしてその束縛からわが身を解き放たんがために、彼は、それまで10余年にわたって書き留めた着想や洞察、個人的意見の集積を、『人生地理学』の題名で発表したのである。

 この不朽の著書において牧口は、やがて社会や環境に起こる悲劇的な帰結を予見し、警告していた。それは、「帝国」の文化が、その本領を現代世界で発揮するのを許されたときに、彼が愛した日本と世界全体に不可避的に起こるべき帰結であった。

共に人類家族の構成員として

 今日、われわれはその帰結を目の当たりにし、それらと同居しているのであり、いま世界の環境システムは崩壊に近づき、暴力やテロ行為や飢餓や貧困が私たちの社会の基本構造を引き裂いている。「これは人類の危機が深まりゆく恐るべき時代である」とコーテン博士は述べる。

 だが同時に、われわれは「人類の経験上、比類なき創造的な好機に生きているという特権にも恵まれているのだ」という。この書『大転換』は、ともに新しき胸躍る冒険へ旅立つ世界の人々にあてた、希望と挑戦課題のメッセージで締めくくられている。

 「私たちに『宇宙生命』の奥深くにある力が呼びかけている。人間としてのわが可能性への新たな意識に目覚めよ、そして人間同士ならびにわが地球に対する責任を持て、と。その責任は、省察や任意の選択をなしうる私たちの能力に伴う責任である。万人にとっての平和と公正そして地球との持続可能な関係は、私たちの能力の範囲内にある。私たちの未来を人類全体の意識的な共同の行動として選択し、私たちの思慮深い選択能力を『宇宙生命』のたゆみない展開のために役立たせることは私たちの力量の範囲内にあるのだ」

 「この偉大な作業は、私たちの未来が私たち次第で決まるという事実を、そして人類全体が生命全体と協調し合っているという事実を悟ることから始まる。私たちの子孫が振り返ってみたとき、私たちの時代こそが大転換の時であったと、彼らに思わせようではないか。あの時がまさに、自分たちの祖先が勇敢な選択をして『帝国』と決別し、新時代に生きることになった時であったと。その新時代とは、自然が具える潜在力を高め、『宇宙生命』の壮大な旅のために役立たせる時代なのだ。いまがその時である。私たちにはその力が備わっている。私たちが待ち続けてきたのは、じつは私たち自身なのだ」

 換言すれば、コーテン博士の主張は、ここで世界の人々にあてた池田大作氏の提案と響き合っている。それは、世界の人々が対話の新時代へと旅立ち、一つの人類家族の構成員としてともに手を携え、協力と協調そして生命と地球への尊崇に基づく新しい文明を実現しようという提案である。本書『大転換』は、そのような対話、そしてそのようなビジョンの実現に対して、意義ある貢献をなしうるものである、と私は思う。

 *英語版『大転換――帝国から地球共同体へ』The Great Turning: From Empire to Earth Community(邦題仮訳)は、今年5月にベレット・ケーラー出版社とクマリアン・プレス社から発刊予定。


略歴

 Dayle Bethel 1923年、アメリカ生まれ。アメリカ・インタナショナル大学教授。ミシガン州立大学で国際比較教育の博士号取得。著書に『価値創造者――牧口常三郎の教育思想』(英語版・日本語版)など。英語版『創価教育学体系』、同『人生地理学』の編集・監修にも携わる。