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寄稿論文

ワシントンの東アジア研究、最新事情

(ジョージタウン大学大学院外交学部在籍・渡辺茉莉子)

(2006年1月24日付)


進む日本離れと日本の孤立

経済・政治・軍事で中国へ高い関心


講演会にも米国人まばら

 昨年、ワシントンで行われた、あるシンクタンクでの講演会のこと。日本政治をテーマにした講演に集まった参加者は、日本のメディア、日本人学生や研究者、そして興味深いことだが、第2次世界大戦で日本と戦ったかもしれない白髪のアメリカ人男性たちの数が目立った一方、アメリカ人研究者や学生の姿は、ほとんど見られなかった。

 なぜなのか? 日本に対するアメリカ人の関心は一体どこへいってしまったのだろうか? そして、アメリカの日本に対する関心の希薄化は、今後日本にどのような影響を与えるのだろうか?

 共産党政権が健在の中国は今や、経済力、政治力、軍事力の三つの点において日本を凌いでいる。

 目まぐるしい経済成長は海外投資家の眼を引きつけ、世界の至る所で「メイド・イン・チャイナ」の商品が出回っている。

 政治力においては、中国は国連安保理における常任理事国であり、6カ国協議のホスト役としての中国は、北朝鮮問題を論じた際にかけがえのない位置にある。また中国の「平和的な興隆」(peaceful rise)という言葉が中国の政治家から度々、口にされ、その戦略はワシントンの識者の間に大きな関心を抱かせている。

 そして、核保有国である中国は北東アジアにおいて近隣諸国を牽制し得る軍事力を持ち、とりわけ陸軍の動員数はアメリカ陸軍にも勝る。

日米より米中間を重視?

 一方、日本はというと前述の3領域において、ワシントンが取り立てて関心や危機感を抱くような現象は見られない。

 日本がバブル景気に沸いていた1980年代、アメリカは日本の凄まじい経済力を国家の脅威とみなしていたが、バブル崩壊後、そのような脅威は音をたてて崩れ去った。

 政治では、中国と比べた場合、6カ国協議における日本の位置はそれほど高くはない。第2次大戦以降、日米同盟を基軸に日米関係は現在に至るまで比較的良好であり、アメリカが憂うべき状況ではない。

 軍事力も、日本の軍事力は日米同盟により、アメリカの傘下にあるも同然で懸念するには及ばない。

 総じて言えば、中国の興隆は、世界唯一の超大国アメリカにとって前例のない現象であり、その新たな現象を学習しようと、ワシントンの政策決定者たちが、こぞって中国研究に精を出すのは十分理解できることである。それに伴い、日本研究に、それほどの注目が集まらなくなってきているのは残念ではあるが、それだけアメリカから信頼され、日米同盟が安心して受け入れられていることの表れとも言えよう。

 しかし、こうした現象の継続が将来日本にもたらすものとは何であろうか?

 アメリカが今後、中国にのみ目を向け日本から目をそらす態度をとった場合に、どのようなことが起こりえるだろうか?

 日中関係が様々な利害の対立により冷却化する一方、米中関係が経済を機軸にさらなる発展を遂げたとすると、日本はどのような状況に置かれるのか? 可能性として浮上するのは「日本の孤立」である。

 アメリカと強力な同盟関係にある日本は、これまでのところ、アメリカという超大国の傘下に入ることで国際社会での孤立を防いでいる。政治家個人のレベルでは、小泉―ブッシュ間の関係は、胡錦濤―ブッシュ間よりも友好的であり、日米同盟は非常に安定した状態にある。しかし、国家のレベルで、経済を含め将来の利害を考えた際に、アメリカは日米間よりも米中間を重視する可能性がないとは言い切れない。

“草の根”の活動強化を

 米中間は人権問題をはじめ、いくつかの対立要因をはらんでいるものの、中国経済がアメリカ経済、そして世界経済に必要不可欠な存在である以上、そして、その重要性が今後さらに高まると予想されると、米中間が将来、悪化することは考えにくい。

 また、ワシントンが中国により関心を示し、日本にさほど魅力を感じていないという現状は、日米関係にとって憂うべき事態であり、今後の日米同盟にも影響を与えかねない。

 さらに、忘れてはならないのが、現在のアジアにおける日本の位置である。日本が国連安保理の常任理事国となることを望む際、最大の障害となったのはアジアからの反発であった。歴史問題を背景に、日本は政治と外交のレベルでアジア諸国と真の友好を築けていない。

 アジアにおいては信頼を勝ち取れるどころか、どの国ともパートナーシップを結べておらず、日本はアジアから隔絶されていると言っても過言ではない。であるがゆえに、アジア諸国から信頼されるよう、さらなる外交努力を払わねばならないことは言うまでもない。

 そのためには、政治と外交レベルにのみ執着するのではなく、草の根レベルの活動をさらに強化する必要があるのではないだろうか。アメリカ国内における日本研究者の養成、日本国内における中国および韓国研究者の養成はもちろん、そうした研究者は語学と国際関係の知識に長けていなければならない。

 若い世代を教育することは、未来における最大の投資である。そして、民間レベルにおける対話をさらに促進し、互いの理解を深めると同時に日本の魅力を、国をあげて世界にアピールしていく即戦力が必要ではなかろうか。

 (ジョージタウン大学大学院外交学部在籍)


略歴

 わたなべ・まりこ 埼玉県出身。津田塾大学国際関係学科卒。現在、ワシントンのジョージタウン大学大学院で安全保障を専攻。リサーチ分野は、北東アジア安全保障、軍縮、中東情勢、テロリズムなど多岐にわたる。昨夏、国連本部軍縮局にてインターンを経験。