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寄稿論文

日本国際政治学会2005年度研究大会から

(2005年11月29日付)


戦後60年の節目に世界を見つめる

米軍再編めぐり多角的な論議も

グローバルな同盟の中の日本の役割とは


 日本国際政治学会の2005年度研究大会が18〜20日、札幌コンベンションセンターで行われた。今年の研究大会は、参加者が一堂に会する共通論題のほか、部会が17(日韓の国際政治学会による合同部会「北朝鮮学の可能性」も含む)、分科会が総計34と、多彩かつ充実したものであった。ここでは、18日の在日米軍の再編をめぐる分科会の内容を紹介するとともに、19日に「国際政治におけるリージョナル・ガバナンス」と題し開かれた共通論題について、創価大学平和問題研究所の玉井秀樹氏にリポートしてもらった。

 18日、A―3とB―3分科会の連続という形で3時間45分の時間を確保して行われた安全保障I(責任者=梅本哲也・静岡県立大学教授)では、「在日米軍の再編」をめぐり多角的な論議が行われた。

 16日に京都で行われた日米首脳会談の焦点ともなった「在日米軍再編」とは、10月29日に日米両国政府の安全保障協議委員会(通称2プラス2)後に発表された共同文書「日米同盟:未来に向けた変革と再編」にもられた内容をさす。

 共同文書では、(1)21世紀の安全保障環境の中で、日米(特に自衛隊と米軍)の間でどのような役割分担が行われるべきか、(2)米軍の再編(トランスフォーメーション)に伴い、海外駐留米軍配備見直しも行われる中で在日米軍はどのように再編されるべきか――の2点に関する日米間の合意事項が盛り込まれている。

 分科会は4人の報告者が発表。「日米関係の視点から」(村田晃嗣・同志社大学教授)、「軍事戦略の観点から」(高橋杉雄・防衛研究所教官)、「国内政治の観点から」(我部政明・琉球大学教授)、「豪米関係との関連で」(植村秀樹・流通経済大学教授)と、それぞれの専門性を踏まえ論じた。

 司会と討論者を兼ねた梅本氏は、そもそも米軍の再編は15〜20年先を見越して、将来の脅威もしくは脅威となりうる競争者に備えて行われてきたもので、今回は米国のライバルとして中国を意識したものであったが、9・11同時多発テロを受けて概念が変化してきたと指摘。日米同盟が、日米安保条約が規定している(日本および極東という)範囲からグローバル(地球規模)へと変化する中で、在日米軍の再編の動きは新たな日本の役割分担を促していると問題提起した。

 村田氏は、今回の米軍再編を、国際環境の変化という観点で見ることもできると指摘した。すなわち、大きな戦争の後には国際環境の変化があるもので、第1次大戦後は国際連盟が、第2次大戦後には国際連合が発足している。ところが冷戦後に主だった変化はない。米国の優越を背景にした今回の米軍再編が、冷戦後の国際環境の変化を体現しているというのである。

 興味深かったのは、高橋氏が、マスメディアで「中間報告」と報道されている今回の共同文書を位置づけて、冷戦型配備から21世紀型配備へと変化する中での「始まりの終わり」と表現したことだ。1999年の防衛ガイドラインにはじまる新しい日米協力が、今回の共同文書で一応の完結をみたというのだ。

 問題は日本が履行できるかどうかだが、在日米軍再編に関しては、各地方自治体から既に強い反発の声が聞かれる。我部氏は、在日米軍基地の7割を抱える沖縄県の現状を紹介しながら、国内調整の政治的リーダーシップの欠如は深刻であると指摘。基地移転問題のシンボルともいうべき普天間飛行場をめぐる二転三転の交渉の経緯を例にあげつつ、日米の官僚レベルが主導した協議には限界があると断言した。

 植村氏は、第2次大戦以来、安全保障の面で米国と緊密な関係を保ってきた豪州との比較の観点から、在日米軍の再編問題について論じた。


共通論題での議論から

(創価大学平和問題研究所助教授・玉井秀樹)


国際政治におけるリージョナル・ガバナンス

創大は北東アジア共同体を研究


 「ガバナンス」(統治)という言葉は、環境破壊、感染症などの疾病、薬物などの国際犯罪、国際テロリズム、貧富の格差、大量破壊兵器の拡散といった人類共通の課題の解決に取り組む、地球的統治(グローバル・ガバナンス)として広く使われるようになったものである。

 今回の共通論題テーマは、これまで地球的(グローバル)な課題としてとらえられていたものを、地域的(リージョナル)な視点で取り組むことで、より具体的な「統治」の姿を描こうとする意欲的なものであったといえよう。

 会場では、国分良成教授(慶応大学)の「東アジア地域ガバナンスの可能性と限界」、立山良司教授(防衛大学校)の「中東におけるリージョナリズムとリージョナル・ガバナンス」、月村太郎教授(神戸大学)の「バルカン地域におけるバルカン化と非バルカン化」と3題の報告が行われ、それぞれの地域における地域的統治(リージョナル・ガバナンス)の実現状況が述べられた。

 立山教授は中東における地域協力の枠組みが未成熟であること、また、月村教授はヨーロッパ東南部の「バルカン」が独自の地域性を保持することの困難さなどを指摘し、いずれも具体的な地域的統治と呼べる動きはみられない状況について論じた。

 一方、国分教授は、経済、環境保護、海賊対策といった東アジア地域協力の進展が、主権国家中心の地域主義的枠組みを超えて地域的統治へと発展していく可能性を示すものと指摘した。さらに国分教授は、北朝鮮の問題をめぐる6カ国協議について、「事態が少しずつではあるが確実に進展」しており、「安全保障ガバナンスの枠組みとして先駆的意味を持ちうるかもしれない」との見通しも示した。

 日本の諸機関では、東アジア地域に共通する諸問題の解決をめざした地域共同体形成についての研究が進められており、創価大学平和問題研究所でも北東アジア共同体に関する研究プロジェクトに取り組んできた。

 かつてはアジアの多様性と国家間対立の深刻さから共同体形成の難しさが強調されてきたが、今回の共通論題では、国家の枠を超えて、また、市民団体や学術機関などNGO(非政府組織)なども加わって問題の解決をめざす、地域的統治が語られるまでに状況が進展していることが示された。今後、地域共同体形成の具体的方法に関する研究もさらに発展することになろう。

 地域的統治あるいは地域共同体いずれも、地域に暮らす人々の生活と安全をより確かなものにすることが最優先課題である。その点、「良い統治(ガバナンス)を効果的に実践する方途」をめぐる今回の共通論題の議論は、実際の政策形成にも貢献しうる意義深いものであったといえよう。

 (玉井秀樹・創価大学平和問題研究所助教授)