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寄稿論文

環境と地域社会の創造

(在北京、翻訳家・呉 文莉)

(2005年11月1日付)


北京市「社区」住民の取り組み

訪中した研究者との国際交流も


職場単位の住居から自由選択に

 1990年代以降、市場経済の発展にともない、中国の都市部において住民の構成要素が著しく変わった。従来は「単位」(職場)ごとに住居が固定化されていた。しかし、現在では個人で住宅を自由に選択・購入できるようになり、定年退職者、一時帰休者、私営企業主、出稼ぎ労働者、外国人など多様化された人口の増加および、週休2日制の実施で在職者も在宅時間が長くなるなどの変化に対応する形で、「社区」と呼ばれるコミュニティーが住民の協調・自治管理の最善の手段として導入され、急ピッチで構築されようとしている。

 社区とは「社会生活の共同体」の意である。社区の主な業務は住民の日常生活へのサービス提供で、具体的には住民の争いごとの仲裁、治安維持、環境美化・リサイクル活動の推進、地域福祉・生活保護事務、就職斡旋、学校教育の補助機能などがある。通常、中国の都市部では行政の末端機関として「街道弁事処」が置かれ、その下部組織として、政府の管理と住民自治管理のパイプ役兼執行者としての「社区居民委員会」が置かれている。

 一例を挙げれば、北京市宣武区の人口は約54万人、8つの街道弁事処と108の社区居民委員会(2004年末現在)が設けられている。椿樹園団地は北京市の老朽化家屋改造プロジェクトの一環として1999年に建設された。団地は18棟、約2700世帯、1万人前後の住民が暮らしている。

徹底的なリサイクル活動を展開

 2000年4月22日、「アース・デー」の日に、社区でエコライフの普及に取り組む環境NGO(非政府組織)「北京地球村環境文化センター」(以下、略称「北京地球村」)創始者の廖暁義さんが椿樹園団地住民を調査した際、多くの家では省エネ電球、節水蛇口をすでに使用していることに注目した。椿樹園街道弁事処の責任者に、ここをゴミ分別のモデル地域にしたらどうかと提案し、即座に同意を得た。それ以来、団地の住民は北京地球村のスタッフの指導の下、ゴミの分別収集による徹底的なリサイクル活動に取り組んできた。

 03年7月、宣武区椿樹園街道弁事処、椿樹園社区居民委員会の協力のもと、北京地球村は椿樹園団地内で、住民が団地内の環境問題を自力で解決するために、中国初の社区住民向けの環境NGO「居民公共環境議事会」(以下、略称「議事会」)設立を支援した。

 05年8月4日、椿樹園社区住民活動室で、椿樹園社区「議事会」のメンバーと日本の環境法政策を専門とする研究者からなる訪中団との交流会が開催された。そこで、互いの環境保護の取り組みとゴミ分別の事情について紹介・討論を行い、さらに「議事会」のメンバーの2人の自宅を訪問し、「エコライフ」の実情を見学した。

日本の「公害」経験を生かして

 「議事会」メンバーの紹介によると、現在では15歳から81歳までの住民代表16人が「議事会」でゴミの分別処理・ペットの苦情処理・ゴミの資源化・省エネ・廃棄自転車の処分という5つのグループに分けてボランティア活動を実施しているとのこと。

 訪中団のメンバーより、1950年代以降、かつて日本の高度経済成長時代に悲惨な環境公害を経験した時に、企業・行政・住民間に対立と不信が生じ、地域コミュニティーが崩壊同然の状態から、現状のままではいけないという危機感で、90年代以降、徐々に相互対話を進めながら、街づくりをするように発想を転換した経緯の紹介があった。環境と福祉を大切にするコミュニティー作りは中国と日本の両国民にとって大事なことで、「議事会」のメンバーはぜひ日本の経験を生かしたい、チャンスがあれば日本へ行って日本の住民とも交流したいと語った。

 地域住民はエコライフという入り口から、実は地域コミュニティーへの主体的な参画という、次元の高い活動に踏み込んでいる。都市における地域社会の創造プロセスが、草の根環境活動に触発されたという点に、一つの新しい方向が見出せる。環境を切り口に、地域コミュニティーの形成に向かっている北京の例とそこで行った中日住民間の最初の民間交流。このような交流はこれからも続いていくだろうし、その展開を注目したい。

 (在北京、翻訳家・呉 文莉)


略歴

 Wu Wenli 1978年、吉林大学入学。79年4月、留学のために中退。83年、創価大学卒。東京大学研究生を経て、中国社会科学院新聞研究所世界新聞研究室と中国新聞史研究室勤務。現在は翻訳家、北京市在住。著書に『公共関係学概論』(共著)、訳書に『新聞学概論』がある。