Current Directory is http://www.seikyo.org/【Seikyo Media Page】Copyright (C) 1997-2005 by The Seikyo Shimbun.



メディアのページ

寄稿論文

北東アジア情勢と日米関係

(ジェームズ・ケリー前米国務次官補(東アジア・太平洋担当)に聞く)

(2005年6月28日付)


急展開する朝鮮半島情勢

6カ国協議の再開に期待


 第1次ブッシュ政権で東アジア・太平洋政策の立案、遂行の中心的役割を担い、朝鮮半島問題を巡る6カ国協議では米国代表として最前線で交渉にあたったジェームズ・A・ケリー前米国務次官補。日本国際問題研究所主催の講演会(21日)のため来日したのを機に、近年の北東アジア情勢と日米関係についてインタビューした。(聞き手・野山智章論説委員)


日韓、日中関係の改善を

 ――20日に、ソウルで日韓首脳会談が行われました。日韓関係は今、靖国問題や従軍慰安婦問題、さらには領土問題である竹島問題などでギクシャクしています。

 確かに両国はいくつかの難しい問題を抱えていますね。しかし、会談の実現で、私は少し希望が持てるようになりました。日本の首相と韓国の大統領との会談は、決して投げ出してはならないものだと思っています。

 最近、あるフォーラムで「なぜ米国は歴史問題について、もっと発言しないのか」という質問を受けました。その理由のひとつに、問題が非常に複雑であることが挙げられます。

 日韓の首脳間で率直な対話がなされていることで、両国関係が少しでもよくなることを期待します。あまりにも重要な2国間関係だけに、壊してはならないからです。

 ――次に対中関係ですが、靖国問題や日本の国連安保理常任理事国入りなどを巡って中国で反日デモが起こり、その後も来日した中国の呉副首相が小泉首相との会見をキャンセルして帰国するなど、日中関係はかつてないほど悪化しています。

 日中の首脳が、相互訪問による直接会談を行う準備ができていないことは誠に残念なことです。他の国で各国の首脳たちが集まった際に、日中首脳の会談を持つことも大切ですが、やはり日本と中国は、直接話し合う場を持つべきではないでしょうか。

 今、中国政府は、国民の反日感情をかき立てようとしているように思えます。様々な国内問題(貧富の格差や汚職など)に対して、公共の場での国民の感情表現が制限されているため、反日を、その捌け口とするものだという見方もあります。先日、日本の友人がインターネット上の反日感情の模様をおさめたディスクを送ってくれましたが、大変にひどい内容でした。

 私の考えでは、これを中国政府が指揮しているとは思いませんが、刺激を与えているのは確かです。だから一層、心配ですね。あまりにも強い国家主義(愛国心)が、時に日本に対する憎悪感情として表れてしまうのは問題です。しかしながら私は、日本と中国が、将来よい関係を築いていけないとは全く思っていません。ただ、この懸念を軽視してもいけませんね。

北朝鮮には対話と圧力で

 ――6カ国協議についてうかがいたいのですが、中断されて今月下旬で1年になります。ようやくよい兆候も見られ、17日、韓国の鄭統一相と平壌で会談した北朝鮮の金総書記は、米国の対応次第では「7月にも6カ国協議に復帰する用意がある」と発言。21日、韓国と北朝鮮の閣僚級会談が13カ月ぶりにソウルで始まりました。

 確かに韓国は強く6カ国協議の再開を求めてきました。日米両国もそうです。(核兵器や、ミサイル問題など)重要な問題について、議論の場を持たねばならないと思います。本来、北朝鮮はすすんで交渉をしていくべきなのに、現在は、すべての過程を遅らせるための策のようになってしまっています。

 ――あなたが米国代表として参加してきたこの6カ国協議は、何らかの変化を生み出していける唯一の道だと思いますか。

 そうですね、米国の政策から見ても、6カ国協議は様々な問題を解決する可能性を一番秘めていると思います。しかし、北朝鮮は少なくとも40年間、核兵器を要求しています。そして私が知っている範囲でも、核兵器開発のための3種類の異なったプログラムを行ってきています。

 <21日の講演でケリー氏は、北朝鮮の核問題を、(1)1990年代前半の第1次核危機以前に獲得されていた「古いプルトニウム」(2)「最近処理されたプルトニウム」(3)濃縮ウラン――という三つの観点から複合的に検討すべき必要があるとし、北朝鮮問題を中国政府に任せておくのでなく、日米韓などの関係諸国が共通認識を持ち、連携して取り組み続けていくことが重要だと述べた>

 そのなかには、26年間に及ぶプログラムもあり、北朝鮮にとって非常に価値あるものです。核放棄へ向け、対話や圧力をかけるなどの方法で説得していくしかないのです。

米中は“堅実な関係”へ

 ――米中関係も経済・貿易摩擦などを抱え、必ずしも良好とはいえません。ブッシュ米大統領は最近、中国への警戒心を露にしています。

 まず第一に、ブッシュ大統領、チェイニー副大統領、ライス国務長官は、中国と堅実な関係を築くことを決めました。中国の発展はめざましいですからね。

 中国との関係を言葉で表すならば「協力的・建設的・率直な」関係と言えるでしょう。「率直な」というのは様々な問題に対し、直接かつ正直に対話を重ねていくことです。

 米中間には種々議論すべき問題があり、また大きな意見の不一致も抱えています。台湾問題に関しては少し状況がよくなっていますが、人権問題など、まだまだ議論を重ねる必要があります。

 経済の分野に関しては、知的財産の問題も含め、本当に幅広い問題を抱えています。例えば、映画「スター・ウォーズ」最新作が米国で封切られた6時間後には、海賊版DVDが中国の露店などで出回っていました。それ以外にも多くの製品が不正コピーされています。しかし、中国はWTO(世界貿易機関)加盟国であり、国際的な貿易システムに基づいたルールに則った対応が迫られます。

 また、日本・中国・韓国の3カ国は、米国に対し重大な金融投資も行っています。そういった経済的見地から見れば、米国と中国は、ある意味、抱きかかえ合うような関係にあります。

 そして、米国は中国との貿易収支を均衡のとれたものにしたいと考えています。通貨政策(人民元の切り上げ)によって達成できるかもしれませんが、すべてを解決する策とはならないでしょう。

 今日、東アジアの全体的な構造や、国際政治情勢は大きく変化してきています。日本と米国は、自分たちだけのためでなく、この地域のすべての国々のために協力すべきことを本当に多く抱えていると思います。先例がないだけに、本当に複雑で難しい問題です。


略歴

 James Andrew Kelly 1936年、米国ウィスコンシン州生まれ。59年、海軍兵学校卒。68年、ハーバード大学で経営学修士号。77年、国防大学卒。82年、海軍大佐にて退役。83〜86年、国防次官補代理(国家安全保障問題担当)。86〜89年、国家安全保障会議アジア問題担当上級部長兼大統領特別補佐官。94年から戦略国際問題研究所(CSIS)太平洋フォーラム議長。2001〜05年2月まで国務次官補(東アジア・太平洋担当)。

取材メモ

説得的な第一人者の言

 米議会で、党派を超えて6カ国協議の停滞に批判が高まっても「6カ国協議は死んでいない」と語り、再開への期待を表明してきたケリー氏。朝鮮半島の情勢が急展開する中、都内のホテルで開かれた講演会(JIIA国際フォーラム)は“第一人者の言に傾聴しよう”と熱気に包まれた。

 今回、超過密な滞在スケジュールを割いて本紙の取材に応じたケリー氏は、穏やかな人柄の紳士。長年の知己である公明党国際局長の上田勇衆議院議員(財務副大臣)との交友の様子を楽しげに語るなど、気さくな笑顔が印象的だった。