Current Directory is http://www.seikyo.org/【Seikyo Media Page】Copyright (C) 1997-2005 by The Seikyo Shimbun.



メディアのページ

寄稿論文

福岡の「トインビー・池田」展記念講演から トインビー博士が求めたもの

(同志社大学教授・渡辺武達)

(2005年6月21日付)


東洋の若き指導者と人類の未来語り合う

「仏法思想は世界平和への道筋」と評価


 「『21世紀への対話』――トインビー・池田大作展」福岡展記念の連続講座第3回が5月21日、飯塚市のコスモスコモンで行われ、同志社大学の渡辺武達教授が「トインビー博士が求めたもの〜池田会長との対談から」と題し講演した。ここでは要旨を紹介する。

 1967年、トインビー博士が京都産業大学の招聘で3度目の来日をされた際、幸運にも通訳をさせていただいた。博士は温かいまなざしが印象的で、限りなく優しい方だった。特に、ベロニカ夫人に対する非常に優しい振る舞いが忘れられない。私は日中の卓球交流(ピンポン外交)を通じて周恩来首相にも何度かお会いしたが、周首相も夫人のトウ<登におおざと>穎超さんに大変に優しかった。一流の方には、一流の強さと優しさがあると感じ入った次第である。

 トインビー博士の偉大さ、博士が20世紀最大の歴史家と称される理由として、私は、西洋的科学と哲学の限界を埋め合わせるものとして仏教哲学を位置づけた点があげられると思う。米英中心の西洋的パワーと知識で世界をコントロールすることの危険性を深く認識していたのである。博士の歴史観と平和観の卓抜さは、歴史の動きと権力構造への理解の深さに由来しているのである。

 私がトインビー博士と初めて出会った日、さりげなく「(日本の)憲法第9条は人類の宝、仏法思想は世界平和への道筋」と言われたことには驚いた。また、東洋哲学、宗教への造詣は大変なものがあった。このことが2年後に池田会長(当時)へ対話を呼びかける書簡を届ける淵源となったのだろう。トインビー博士の方から池田会長との対談を望んだ理由は何か――それは、東洋の日本にグローバル社会の明日について語れる相手を見つけたからであった。

 精神文明の客観的比較研究を目指したことにトインビー歴史学の特徴がある。博士は、近代西洋文明は分析手法の科学には進歩をもたらしたが、人類存在の奥義としての普遍的宗教、ヒューマニズムによる文明救済の道は提示していないと強調されていた。その意味で、創価学会の日常活動を見ると、社会の矛盾の政治的な解決と、種々の悩みを積極的に解決しようと努力する信仰の姿は、トインビー博士が文明の相対比較のなかでつかんだ一つの答えではなかったかと思う。

 今回、池田・トインビー対談集『21世紀への対話』を再読した。西洋を代表する歴史学者と東洋の若き宗教指導者が語り合ったテーマは極めて多岐にわたる。難解な諸問題に対しても明確な回答を導き出している。対談から30年後の未来にあたる今日を明確に見通したかのような、この一書に学び、両氏が目指した平和の世紀を築いてまいりたい。

 ここ福岡で「トインビー・池田大作展」を観賞して学んだことは、(1)表面的世界を背後から支える人間の絆としての社会構造への理解の深さであり、(2)世界の存在物から、より優れたものを見分け、評価する識別力と評価眼であり、(3)他民族を武力と情報で永続的にコントロールできると考える愚かさを知れ、との警告である。

 今こそ、「まともな歴史観の形成」が必要である。歴史を創ることは有意の人間による行動からはじまる。歴史を知ることは座して読むことで可能だが、問題はそれをどう活かすかである。トインビー博士の文明の相対比較史観と池田名誉会長の宗教観・社会観につながり、自身の生命変革に、社会活動に活躍される創価学会の皆さまは本当に幸せである。ますますの活躍を期待したい。


略歴

 わたなべ・たけさと 1944年、愛知県生まれ。同志社大学大学院修士課程修了。同志社大学メディア・コミュニケーション研究センター代表。著書に『テレビ―「やらせ」と「情報操作」』『メディア・リテラシー、情報を正しく読み解くための知恵』『市民社会と情報変革』など多数。