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(2005年5月31日付)
日本は共生・融和の推進役に |
イスラーム教徒は世界人口の約5分の1にあたる約14億人おり、約60カ国に広がっている。
イスラームを理解する上で、次の五つの要点を挙げることができる。
(1)世界のイスラーム教徒が一つの共同体(ウンマ)であるという発想、(2)信仰の簡明さによって、多文化・多民族への対応性を保っている、(3)聖典クルアーン(コーラン)はアラビア語に限られ、翻訳は単なる解説とみなされる。クルアーンには「読誦されるもの」という意味があり、覚えることが重んじられ、識字率が低い時代でも布教が広がる効果がある。また、これらによって、アラビア語がイスラーム世界の共通語となっている、(4)法学者がイスラーム法を社会の実態に即して解釈し、それに基づいて人々は生活を営み、共同体や国家を司っていく。そこに、国家・民族の違いを超えた国際性がある、(5)以上の点を踏まえ、現代においてイスラーム復興が起こっている。
このようにイスラーム世界は非常に平和と秩序を重んじる。しかし、それに反して、なぜテロや紛争が絶えないのか、という疑問を持っている方も多いだろう。
大きく分けて、イスラームには二つの考えが存在する。一つは、平和と秩序を重んじる思想であり、信仰の自由のために、平和と秩序が必要であり、そこに国家や軍事力の存在意義も生まれるという考えが、歴史的にも教義的にも王道であると思う。
これに対し、歴史の動乱期に一部で生まれた考え方に、平和や秩序、国家が崩壊し、信仰の自由が危ぶまれている時には、戦闘を選択し、抵抗すべきだというものがある。
近現代は、この二つのイスラームが争っている状態だが、圧倒的多数が対話を望む中道派である。そこで、私たちに何ができるのか。この21世紀を共生的な人類文明の創出への道のりとしてとらえ、世界の文明から叡智を取り出して、そこから融合していくべきであると思う。
日本は古来、ほかの文明への感受性に優れ、理解する力を有している。イスラーム世界や西洋に対しても、その「文明理解力」を発揮して、衝突する文明の間に入って鼎談型(三者会談)の対話を積極的に推進し、世界の文明の融和を促進していく大きな役割があるといえよう。
略歴こすぎ・やすし 1953年、北海道生まれ。東京外国語大学修了後、エジプト留学。エジプト国立アズハル大学卒業。法学博士(京都大学)。現在、京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科教授。