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(2005年5月17日付)
メディアは一国至上主義的と批判 |
第1期ブッシュ政権でいわゆる強硬派として知られていた政府高官が、第2期ブッシュ政権で国際機関担当の要職に指名され論議を呼んできた。
3月31日、ブッシュ政権の強い支持の下、ポール・ウォルフォウィッツ前国防副長官が世界銀行理事会で新総裁に選出。またブッシュ政権はジョン・ボルトン前国務次官を国連大使に指名。現在、米連邦議会でその承認を巡って激しい駆け引きが続いている。
いずれも、いわゆる新保守主義派の代表格として知られる人物で、イラク、イランや北朝鮮などの「ならず者国家」に対して強硬路線を主張してきた。
メディアなどは、両者の指名を米国による「国際機関軽視」「一国至上主義」の姿勢の表れと批判するが、これは適切ではなかろう。両者ともにブッシュ政権、米共和党の重要人物であり、むしろブッシュ政権がこれら国際機関を本格的に重視し始めたと考えるほうが妥当だ。
今年1月の大統領一般教書演説でも指摘された通り、第2期ブッシュ政権は世界の安定のためにも世界における「自由の拡大」が不可欠としている。これは、開発途上国などにおける腐敗や貧困などの問題がテロの根源を形成しており、それらの除去のためにも、これらの国々で国民の不満を平和的、政治的に吸収できる民主的な統治体制の確立が不可欠との認識に立脚したものと思われる。
また今後、イランや北朝鮮による核開発問題を巡っても、国連安全保障理事会に事案が付託される可能性がきわめて高く、これら諸課題への対処上、ブッシュ政権は国際組織を必要としている。
コンドリーザ・ライス米国務長官は「米国の国連成功に向けた決意は固く、国連は米国外交の主軸要素」と明言しており、国連などの国際機関の組織や政策の改革を重要課題の一つとする。ウォルフォウィッツ総裁もボルトン前次官も、このために選ばれた人材と考えるべきだろう。
これまでのところ、ウォルフォウィッツ総裁が提示した政策ビジョンは適切だ。彼は世界銀行の多国間主義を尊重する旨を表明。自分の任務は米国の考えを押し付けるのではなく「合意の形成」と強調してきた。様々な市民社会組織や世銀専門家らとの対話を重視し、途上国での貧困削減と腐敗問題是正を最重視する姿勢を宣言している。
伝統的に米共和党は海外援助に批判的だが、これに対して新総裁は、海外援助の重要な支援者となることが期待されよう。ただし彼の国際機関マネジメント能力は未知数であり、これが今後、注目すべき点となる。
一方、ボルトン氏の場合、その政策ビジョンと個人的資質の両面が大きな論議を巻き起こしている。米連邦議会上院外交委員会における公聴会では、彼が10年以上前に行った国連軽視ととられかねない演説や、ここ数年間では国務省で自分と違う見解を持つ情報分析官の更迭を画策した件など、複数の「不適切な振る舞い」がクローズアップされてきた。
ただ、ワシントンDCでは様々な権力闘争が渦巻いており、ボルトン氏に固有の問題とは言い難い批判もあるようだ。彼が国連を軽視しているとの批判が妥当なのか、容易には判断し難い。
第1期ブッシュ政権の任期中、ボルトン次官が国連に批判的だったのは必ずしも多国間主義を軽視していたからではない。同氏が強調していたのは、国連加盟国には既存の条約をまともに履行すらしないうちに次々と新条約交渉ばかり推進する傾向が強く、これを是正すべきという点だ。
ボルトン氏の仕事スタイルにはイデオロギー中心型という側面も見受けられるが、それ以上に彼はブッシュ大統領の政策を忠実に施行する実務指向型という側面を持ち合わせている。つまるところ、彼には大統領のいかなる決定にも忠実に従う性格が強く、むしろ問うべきは、大統領が重要課題として掲げる国連改革等の諸課題の処理に対する彼の実務能力であろう。
1990年代初め、米国務省次官補だったボルトン氏は、国連開発計画に米政府高官を送り込み、米国政府の国連拠出金を増額させて、その組織改革の端緒を開いた実績がある。国連組織改革に関していうならば、少なくとも彼の過去の実績には評価されるべきものがある。
現在、国連は様々な深刻な課題に直面しており、その改革は必須である。
国連によるイラクとの「石油と食料の交換計画」では国連の担当責任者が不当な利益供与を行い、当時のサダム・フセイン・イラク大統領は同計画を悪用、巨額の利益を得ていた。
国連では他にも様々なスキャンダルが連続的に発覚しているが、これらは氷山の一角にすぎないようだ。国連改革には強力な政治的リーダーシップが不可欠である。
かつて米国はユネスコに対してその非効率な組織運営の是正を要求して、資金拠出を停止していたが、日本外務省の松浦氏がユネスコ事務局長に就任後、組織改革を行った結果、ブッシュ政権は資金拠出を再開した。これは、米国や国際機関に対する日本からの「逆外圧」が成功した好例である。
日米両国の開発援助予算は全世界予算の実に40%を占めている現状を考えれば、日本は今回の米政府の人事を通じて、世界のために米国をうまく「利用」しながら、より一層大きな役割を効果的に果たすことを目指すべきであろう。(外交・安全保障問題専門家)
略歴ふるかわ・かつひさ 1966年、シンガポール生まれ。慶応大学経済学部卒。ハーバード大学ケネディ政治行政大学院(国際関係論、安全保障政策)修了。アメリカン・エンタープライズ政策研究所アジア研究部、外交問題評議会研究員、モントレー国際問題研究所主任研究員を歴任。第5回読売論壇新人賞優秀賞受賞。