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寄稿論文

「国境なき記者団」の活動

(ジャーナリスト・関口 千恵)

(2004年12月28日付)


報道の自由度ランク、日本は42位

記者クラブ制度に厳しい批判



本部はパリ、5大陸に100人以上の調査員

 記者クラブ制度に対する批判は、近年、従来より格段にスケールの大きな国際問題と化している。

 2002年と2003年、欧州連合(EU)が日本政府に提出した規制改革優先提案に、記者クラブ制度の廃止が含まれていた。日本の対応いかんでは、情報の自由な流通を阻害する不当慣行としてWTO(世界貿易機関)提訴も検討するという厳しいものだ。

 これらEU提案に先立つ2002年5月、小泉首相に対して記者クラブ制度の実質的な廃止を求めたのが、「国境なき記者団」(RSF)である。

 RSFとは1985年、言論・報道の自由を守るためにフランスで設立された、ジャーナリストによる団体である。パリを本部として欧州8カ国に支部、北米や日本などの主要都市に6支局を設置、その他各国に協力団体をもち、5大陸に100人以上の調査員を抱える。

 「ジャーナリストの投獄や殺害は、事実の目撃証人を抹殺することであり、それによって万人の『知る権利』が脅かされる」という信念のもと、世界中で弾圧・拘禁・殺害されたジャーナリストの支援や救出に当たっている。

 詳細は翻訳刊行された20年史『闘うジャーナリストたち』(岩波書店)に譲るが、各国政府をはじめとする関係当局との交渉力、パワフルでユニークなキャンペーン、ダイナミックな行動力と、その実績に伴う影響力で、世界的に知られている。

自由で平等な情報源アクセス追求

 RSFの活動にはまた、毎年調査・公表する「報道の自由度ランキング」がある。世界各国を対象に「ジャーナリストへの直接の攻撃」「メディアへの攻撃」「報道の自由を侵害した者への処罰やメディアへの法規制」など、53項目の基準をもとに決定する格付だ。

 2004年度の場合、日本のランキングは167国・地域中42位。理由はほかでもなく記者クラブ制度だ。なぜなら、「記者クラブは、マスメディアに対する情報操作を行ったり、また、ある種の情報に対し優先的に関与できるなど、政府とマスコミの一部との間で特別な“身内意識”をもたせることになります。結局は、報道の自由という意味において、正常ではない関係を結ばせることになる悪いシステムなのです」(12月8日のTBS系「筑紫哲也ニュース23」での、ロベール・メナールRSF事務局長発言)。

 RSFやEUによる批判は、そもそも、半世紀近くにわたって情報源への自由で平等なアクセスを要求してきた、日本駐在外国報道機関で構成される日本外国特派員協会(FCCJ)の主張を反映したものだ。

 加えて、RSF・EU・FCCJに共通する目新しく印象的な事象がある。それは、記者クラブ制度によって取材・報道上の不利益を被る主体として、日本人フリーランス・ジャーナリストと、その活動拠点である出版社系メディアも明確に意識されていることだ。

フリーランスの訴訟に支援スクラム

 FCCJに関しては、オランダ「NRC―ハンデルスブラッド」紙のハンス・ヴァン・デル・ルフト特派員が会長を務めていた2年ほど前から、こうした姿勢が際立つようになっている。

 日本語も堪能な同特派員は、FCCJ機関紙12月号に、今年10月、記者クラブ制度訴訟を提起したフリーランス・ジャーナリスト、寺澤有氏のインタビューを執筆している。寺澤氏は、週刊誌を中心に、警察の組織的犯罪に関する多くのスクープをものにしてきた実績で、FCCJ会員の間でもよく知られている。

 今回の訴訟は、裁判所が記者クラブ非加盟社に傍聴席と判決要旨を用意しないのは、憲法14条(法の下の平等)および21条(表現の自由)に反するとして、国を相手取り248万円の損害賠償を求める内容。1999年に行った同趣旨の訴訟に次ぐものだ。

 実際、今回の請求原因の一部にある武富士にせよ、かつてのオウムにせよ、その追及に最も貢献した日本人フリーランスが、当該公判の傍聴席さえ用意されないという事実に驚く外国人ジャーナリストは昔から多い。

 12月15日、東京地裁での初回口頭弁論傍聴後(次回は来年2月9日)、ヴァン・デル・ルフト特派員から、日本人フリーランスの結束について問われた。まさに自省も込めて、FCCJ・RSF・EUの問題提起を傍観している段階ではない。

 (ジャーナリスト)

略歴

 せきぐち・ちえ 1962年、東京生まれ。早稲田大学卒業後、フリーランスに。内外の人権問題を幅広くカバー。特に在日外国人の人権については、ボランティアで相談を受けるとともに、地方自治体・法律家団体・市民団体などで講演。著書に、国際結婚のパイオニア・ケース・メーキング体験をつづった『在留特別許可』(配偶者サーム・シャヘドとの共著、明石書店)など。