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(2000年10月31日付)
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双方向型マスコミ時代の到来 視聴者、読者が能動的に発信できる環境へ |
BSデジタル放送(テレビ)が十二月一日からスタート、わが国のマスコミ界もい よいよ本格的なデジタル化時代を迎える。
このことは、われわれメディアを利用するものにとって何を意味しているのか、二 十一世紀を迎えメディアとわれわれとの関係はどう変わるだろうか、考えてみよう。
よくBSデジタル放送の登場によって、テレビの映像がより鮮明になると同時に、 多チャンネル化されるといわれる。だがこれは単にそれだけにとどまらず、他のメデ ィアに対しメディアの利用者との間に双方向化を促すという点で極めて大きな影響を 及ぼすといってよい。
また、このことは同時にマスコミ情報を利用するわれわれのマスメディアと向き合 う際の姿勢そのものが、より能動的なものへと変革を迫られることをも意味してい る。こうした意味では、メディアとわれわれとの関係は新たな変革の時代に入る、と いってよいだろう。
ここでデジタル化によって鮮明な映像を楽しめる以外にテレビは、どう変わるのか 少し具体的に説明しておこう。まず、リモコン操作で同一画面上で同時に複数のチャ ンネル放送を視聴できる、つまり多チャンネル化である。
このほか受像器が内蔵しているサーバーを利用し、視聴中に他のチャンネルの番組 を録画しておくこともできる。しかし、デジタルテレビの最大の特徴は、視聴者のリ クエストに応じて視聴中の番組内容に関連した情報が画面上に提示されることであ る。
例えばサッカーの試合をテレビで見ながら参加選手の経歴など、知りたい情報をリ モコンでリクエストする。するとその内容に応じたデータが画面上に示される仕組み だ。
これまでのアナログ方式によるテレビでは見られなかった全く新しい情報サービス である。これは、一見極めて単純なことのように思われるかもしれない。だが、そこ には従来のマスコミの定義を書き換えなければならないほどの意味がある。なぜか。
視聴者がテレビの映像を見ながら、欲しい情報を要求すればデータの形で提示され るということは、情報の送り手であるテレビ局と受け手の視聴者の関係が、一方通行 ではなく双方向型になることを意味しているからだ。
アナログ方式のテレビでは、テレビは見るもの、視聴者の立場はテレビ局に対し 「受け身」である。最近はファックス、電子メールなどを通じて視聴者の意見を反映 させながら、テレビやラジオの番組を進行させていくケースが見られるようになって きた。
これは明らかにマスコミの双方向化が意識されていることの表れだ。実はデジタル テレビの登場の最も重要な意義は、視聴者とテレビ局の関係が「双方向」型へと変わ っていくことなのである。
本来、マスコミとは不特定多数の人たち(大衆=マス)に対し、一方的に大量の情 報を伝えるものだ、と説明されてきた。したがってテレビは視聴者にとって単に「見 るもの」としての存在にすぎなかったわけだ。
しかし、双方向化時代のデジタルテレビはそうではない。
情報の受け手が情報の発信者にもなる。そういう点で、両者の間には従来の一方通 行型と異なる「双方向型コミュニケーション」が成立するといえよう。
このようなテレビの変革は、今後、新聞や雑誌など他のメディアに対しても影響を 及ぼしていくことは必至と思われる。読者と新聞、雑誌の編集者との関係は、双方向 を基本としたものへと従来より以上に密接なものになろう。
編集者が記事を企画する場合にしても、読者は何を求めているか、要求をできるだ け汲み上げていく努力が、どうしても欠かせない。読者あっての活字メディアである からだ。実際、新聞編集者の意識は既に双方向型の紙面づくりを目指そうと大きく変 化しつつある。
デジタルテレビの登場は、こうしたマスコミ界の動向に一層の拍車をかけるに違い ない。
マスコミが双方向性を強めていくことは、メディアを利用する立場にあるわれわれ にも大きな影響を及ぼす点を忘れてはならない。これまでは、視聴者や読者はメディ アに対し受け身の立場にあった。ところが既に述べたデジタルテレビに象徴されるよ うに、メディアの双方向性を有効に活用するためには、われわれ自身が問題意識を持 ってメディアに対し欲しい情報を要求できるだけの能力を持つことが問われることに なる。
時にはメディアを批判できる力も必要となろう。言い換えれば従来のようにメディ アに対し、われわれは単に受け身でなく積極的に情報を求めて発信していく、能動的 立場に立つべくメディアとの関係を転換していかなければならない。メディアに向か って発信できるだけの能力を持つものと持たざるものとの間には、当然一種の情報格 差が生じよう。こうした観点に立つとデジタル放送がマスコミ界に投げかける波紋は 極めて大きい。
(久留米大学、東京工学院専門学校兼務講師)
略歴 いまさと・じん 一九三四年、東京都生まれ。早稲田大学卒。時事通信社に入社 し、バンコク特派員、編集委員、「時事解説」編集長、資料室長を経て、九〇年退 社。編著に『先端技術の基礎用語』、著書に『マスコミ・情報の考現学入門』ほか。