Current Directory is http://www.seikyo.org/【Seikyo Media Page】Copyright (C) 1997 by The Seikyo Shimbun.



野山智章著『マスコミ報道と人権――ヨーロッパ先進国と日本の落差』について



 聖教新聞学芸部副部長(メディアのページ担当)野山智章著『マスコミ報道と人権――ヨーロッパ先進国と日本の落差』(第三文明社1997年)がでました。おもに聖教新聞紙上に掲載されたインタビュー記事をまとめたものです。聖教新聞に掲載された「書評」などの記事をご紹介します。


●1面報道(聖教新聞1997年4月24日付)より

第三文明社の「マスコミ報道と人権」が発刊 “日本の落差”を分析

 『マスコミ報道と人権――ヨーロッパ先進国と日本の落差』がこのほど、第三文明社から発刊された。著者は、本紙学芸部の野山智章記者。

 日本は、人権と報道の“後進国”といわれる。「報道の自由」を悪用し、人権をふみにじる報道被害が、後を絶たない。それに対し、ヨーロッパ各国は、プレス・オンブズマン(報道の問題について市民の側に立つ代理人)や報道評議会などの諸制度を整備し、政府や法律を介入させない自主規制による「メディア責任制度」を発達させてきた。

 同書は、スウェーデン、イギリス、ドイツ、フランスの欧州各国の有識者による日本のマスコミへの提言、インタビュー、各国メディア界のリポートを収録。

 「メディアは、市民の側に立って、市民の『知る権利』に奉仕するのが、そのあるべき姿です」(スウェーデン・ストックホルム高等裁判所部長判事のカーシュ氏〈第二代プレス・オンブズマン〉)

 二十一世紀に向けて、日本メディア界の改革の方向性と具体策を考える上で示唆に富む一書である。

 定価八百円(税抜き)。書店、出版センター・コーナーで発売。



書評(聖教新聞1997年5月14日付)より

あまりに大きい日欧の落差

『マスコミ報道と人権』
野山智章著

 今や「第四の権力」といわれるまでに多大な影響力を持つに至ったマスメディ ア。情報化が進む現代社会において、相次ぐ“報道被害”をどうくい止めるかは 喫緊(きっきん)の課題となっている。

 本書は、その手がかりを意欲的な取り組みが進んでいるヨーロッパ各国の諸制 度に求めながら、日本における「メディア責任制度」のあり方を模索したもの。 著者は本紙学芸部記者で、識者に行ったインタビューを中心に、改革への課題を 浮き彫りにしている。

 イギリスで現在、政府から独立し問題解決にあたる「報道苦情委員会」。その 設立に至ったのは、安易な法規制に走ろうとする政府や議会の動きに対し、悪し き“言論統制”を招きかねないとのメディア側の懸念が強く働いたためという。

 以来、「カメラ、ペンが人を殺す凶器になる」(ケネス・モーガン同元代表理 事)との自覚をもったうえで、「(虚偽報道が行われた場合は)それを訂正し、 真実ではなかったことを明言する義務がある」(デビッド・ウィリアムズ同委 員)との報道倫理を堅持しなければならないと、メディアが厳しく自らを戒める ようになったというのだ。

 その他、スウェーデンの「報道評議会とプレス・オンブズマン制度」や、ドイ ツの「報道評議会」などの例を紹介し、著者はこれらが“民主社会のルール”と して自発的に形成されてきた点が何よりも重要であると強調する。

 一方、悪質なデマを執拗に繰り返すメディアがまかり通るなかで、さしたる改 善もなく“言論の暴力”を放置してきた日本。その落差を説明する著者に対し、 ヨーロッパの識者は一様に「信じられない」との反応を示し、メディアの無責任 さとその鈍感な人権感覚をいぶかっていたという。

 “自制・自律なき報道は社会を破壊する”と警告する著者。改革のためには、 「報道の自由」の存立基盤を再確認し、市民との信頼関係を回復することが不可 欠と訴えている。(史)

●第三文明社 八〇〇円



【データ】

著者: 野山智章(聖教新聞学芸部副部長)
書名: 『マスコミ報道と人権――ヨーロッパ先進国と日本の落差』
発行: 第三文明社
刊行年月日: 1997年4月28日
定価: 800円+税
ISBN4-476-03208-7