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新聞人の良心宣言(新聞労連)について



 1997年3月1付聖教新聞「メディアのページ」寄稿論文「メディア責任制度の第一歩へ――新聞人の良心宣言」(執筆は北村肇・新聞労連委員長)で取り上げられていました新聞労連の「新聞人の良心宣言」を参考資料としてご紹介します。なお、原文は丸数字などの機種依存文字をふくんでいるため数字に若干の修正を加えてあります。ご承知おきください。


新聞人の良心宣言

新聞労連

はじめに

 ジャーナリズムがかつてない危機に直面している。マルチメディア時代をにらんで大資本によるメディア関連産業への参入が進む中で、古い歴史を持ち、権力の監視や自由で公正な社会の実現に向けてもっとも大きな役割を果たしてきた新聞の現状を、新聞に携わる私たち新聞人は憂うべき状況と認識している。紙面の内容、記者のモラルなどがたびたび批判され、市民の信頼を損ない、読者離れを引き起こしているからだ。権力監視を怠り、戦争という悲劇を招いたかつての苦い経験を踏まえ、改善の努力はしてきたものの、それは十分ではなかった。私たちは、市民の信頼や支持を失った新聞か権力や大資本の介入を招きやすいことを知っており、それを何よりも懸念している。新聞が本来の役割を果たし、再び市民の信頼を回復するためには、新聞が常に市民の側に立ち、間違ったとは間違ったと反省し、自浄できる能力を具えることである。このため、私たちは、自らの行動指針ともいうべき倫理綱領を作成した。他を監視し批判するこおが職業の新聞人の倫理は、社会の最高水準でなければならない。私たちはこの行動指針を「新聞人の良心」としてここに宣言し、これを守るためにあらゆる努力をすることを誓う。

【基本姿勢】

 新聞人は良心にもとづき、真実を報道する。憲法で保障された言論・報道の自由は市民の知る権利に応えるためにあり、目的は平和と民主主義の確立、公正な社会の実現、人権の擁護、地球環境の保全など人類共通の課題の達成に寄与することにある。

  1. 市民生活に必要な情報は積極的に提供する。
  2. 社会的弱者・少数者の意見を尊重し、市民に対して常に開かれた姿勢を堅持する。
  3. 十分な裏付けのない情報を真実であるかのように報道しない。
  4. 言論・報道の自由を守るためにあらゆる努力をするとともに、多様な価値観を尊重し、記事の相互批判も行う。

I

【権力・圧力からの独立】

 新聞人は政府や自治体などの公的機関、大資本などの権力を監視し、またその圧力から独立し、いかなる干渉も拒否する。権力との癒着と疑われるような行為はしない。

  1. 公的機関や大資本からの利益供与や接待を受けない。
  2. 公的機関の審議会、調査会などの諮問機関に参加しない。
  3. 情報源の秘匿を約束した場合はその義務を負う。
  4. 取材活動によって収集した情報を権力のために提供しない。
  5. 政治家などの公人の「オフレコ発言」は、市民の知る見地が損なわれると判断される場合は認めない。
  6. 自らの良心に反する取材・報道の指示を受けた場合、拒否する権利がある。

II

【市民への責任】

 新聞人は市民に対して誠実であるべきだ。記事の最終責任はこれを掲載・配信した社にあるが、記者にも道義的責任がある。

  1. 記事は原則として署名記事にする。
  2. 公共の利益に反し、特定の団体や党派のために世論を誘導する報道はしない。
  3. 情報源は取材先との秘匿の約束がない限り、記事の中で明示する。
  4. 記事への批判や反論には常に謙虚に耳を傾け、根拠のある反論は紙面に掲載する。
  5. 誤報は迅速に訂正し、掲載時の記事に対応した扱いにする。
  6. 誤報により重大な人権侵害が起きた場合は、紙面で被害者に謝罪し、誤報に至った検証記事を掲載、再発防止策を明らかにする。

III

【批判精神】

 新聞人は健全で旺盛な批判精神を持ち続ける。

  1. 批判はあらゆる事象に向け、皇室も例外とはしない。
  2. 批判の目的は市民の利益を守ることにあり、市民の利益を損なうような誹謗と中傷には陥らない。

IV

【公正な取材】

 新聞人は公正な取材を行う。

  1. 詐欺的方法で取材をしない。
  2. 他人の著作物や記事を盗用したり、趣旨を変えて引用しない。

V

【公私のけじめ】

 新聞人は会社や個人の利益を真実の報道に優先させない。

  1. 会社に不利益なことでも、市民に知らせるべき真実は報道する。
  2. 仕事を通じて入手した情報を利用してインサイダー取引なとによる利益は得ない。
  3. 取材先から金品などの利益供与を受けない。

VI

【犯罪報道】

 新聞人は被害者・被疑者の人権に配慮し、捜査当局の情報に過度に依拠しない。何をどのように報道するか、被害者・被疑者を顕名とするか匿名とするかについては常に良識と責任を持って判断し、報道による人権侵害を引き起こさないように努める。

  1. 横並び意識を排し、センセーショナリズムに陥らない報道をする。
  2. 被疑者に関する報道は「推定無罪の原則」を踏まえ、慎重を期す。被疑者側の声にも耳を傾ける。
  3. 被害者・被疑者の家族や周辺の人物には節度を持って取材する。
  4. 被害者の顔写真、被疑者の連行写真・顔写真はできるだけ掲載しない。

VII

【プライバシー・表現】

 新聞人は取材される側の権利・プライバシーを尊重し、公人の場合は市民の知る権利を優先させる。

  1. 人格、暴力、性的事象に関しては、適切な表現に努める。
  2. 報道テーマに直接関係のない属性の記述によって、差別や偏見を招いたり侮辱を与えたりしないよう配慮する。
  3. 私人の肖像権を尊重し、原則として当人の同意なしに写真を撮影、掲載しない。
  4. 事件・事故、自殺などについては、個人のプライバシーを尊重し、遺族や関係者への配慮を欠かさず、慎重に取材・報道する。

VIII

【情報公開】

 新聞人は、市民の知る権利に応えるため、公的機関の情報公開に向けてあらゆる努力をする。

IX

【記者クラブ】

 新聞人は閉鎖的な記者クラブの改革を進める。

  1. 記者クラブにはあらゆるメディア・ジャーナリストが加盟できる。
  2. 記者クラブに提供された情報は、取材者だれもが利用できる。クラブ員は記者室への市民の出入りの自由を守る。
  3. 記者クラブは、取材・報道に関して談合をしない。人命にかかわる場合などを除き、報道協定を結ばない。
  4. 権力側のいわゆる情報の「しばり」は、市民の知る権利に照らし合わせて、合理的で妥当なもの以外は受け入れない。
  5. 報道機関の目的、役割を逸脱するサービスを受けない。

X

【報道と営業の分離】

 新聞人は営業活動上の利害が報道の制約にならないよう、報道と営業を明確に分離する。

  1. 記者は営業活動を強いられることなく、取材・報道に専念する。
  2. 記事と広告は読者に分かるように明確に区別する。