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渡辺武達著『メディア・リテラシー』について



 同志社大学教授・渡辺武達著『メディア・リテラシー――情報を正しく読み解くための智恵』(ダイヤモンド社1997年)がでました。おもに月刊誌『マスコミ市民』に掲載された論考をまとめたものです。著者は現代のジャーナリズム論ではもっとも注目すべき研究者で、最近は「やらせ」や情報操作などの問題について詳細な研究をもとに実践的な提言をされています。聖教新聞学芸部でもこの本について「書評」と「羅針盤」で取り上げました。それをご紹介します。


●書評(聖教新聞1997年2月12日付)より

『メディア・リテラシー』渡辺武達著
改革への哲学の確立を訴える

 過度の商業主義と広告主(スポンサー)優先主義、その結果としての視聴率万能主義、また、国家権力(政権)への追随と社会的強者による情報の独占と操作――こうしたメディアの堕落を憂うる発言は、これまでも数多くなされてきた。だが本書は、現在のシステムを認めた上での対症療法や、メディア従事者の自主的努力ではもはや「手遅れの状態」であり、次の二つ視点を糸口にしない限り、根本的解決にはならないと主張する。

 第一は市民の「メディア・リテラシー」の向上。

 メディア・リテラシーとは、メディアを使いこなし、メディアの情報を読み解く能力のこと。善悪を見極める賢い視聴者・読者なくして、メディアの改革はおぼつかないからだ。

 第二はメディアの「積極的公正中立主義」の確立。 まず「公正・中立」とは、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の「核疑惑」を例にとれば、朝鮮半島が分断された歴史的経緯や、朝鮮戦争はいまだ「終戦」していないという事実、また日・米・韓の軍事力(核兵力)等の情報と併せて報道すべきだということ。加えて、著者は、世界平和・軍縮の立場から「積極的」に国交樹立や友好関係の成立に向けての報道をすべきだと訴える。

 すなわち著者は、メディアとユーザーの双方に対し、事実のあるがままの認識にとどまらず、善悪の規範、換言すれば哲学・思想の確立こそが求められていると述べる。ここに本書の特筆すべき真骨頂がある。

 自らの判断基準を持たないメディアは、やすやすと利益至上主義に堕し、ジャーナリズムの本義を忘れて権力のお先棒をかつぐようになる。本書ではその一つの典型的な例として『週刊新潮』の“信平狂言訴訟”や“東村山市議のビル転落事故”についての報道を取り上げる。

 明快な視点、豊富な具体例で説得力に富む。(梶)

ダイヤモンド社 一六〇〇円



羅針盤(聖教新聞1997年2月20日付)より

メディア・リテラシー

 第二次大戦中の新聞が真実を伝えず、日本国民は軍部の情報操作によって、ひどい目にあわせられたことを記憶に新しい方も多いだろう。

 しかし、現代にも利益中心主義と一部強者の都合によって、戦前にも勝るデッチあげや偏向報道が行われる場合があることに人々は気付きにくい。

 ジャーナリズムの倫理を研究している同志社大学の渡辺武達教授の近刊『メディア・リテラシー』では、阪神大震災後のテレビ番組や雑誌が、地震の前兆現象や予知の可能性を一斉に喧伝して国民を怯えさせたこと、またO−157 のカイワレ犯人説を誘導していった経緯などを上げて、マスコミが過度の商業主義や視聴率万能に毒されている実態を明らかにしている。

 メディア・リテラシーとは、「メディアを使いこなし、その提供情報を読み解く能力」という意意味である。公正で<市民のため>の健全なメディア社会創造のために、業界の自浄努力は期待薄であり、民衆自身が「賢い読者・視聴者」に育つ以外にないとし、その要件として(1)人権侵害、虚報、誤報、曲報の背景構造を知る(2)市民がメディア形成に参画する、などを指摘。

 折しも、白山信之さんが交通事故の被害者にも拘らず、「週刊新潮」は、あたかも殺人加害者である如くに捏造した報道犯罪の典型(すでに新潮社に対する名誉毀損で白山さんは勝訴)を浮き彫りにするビデオ「嘘と真実」が出た。

 ここには、公器を利用して一市民を殺人者に仕立て上げる――その手口と卑劣の構図が明確に映像化され、現代版魔女狩りの仕組みを目の当たりにできる。

 民衆が、しっかりと眼を開き、一方的な情報の奥にある権力やその手先の狙いを読み取る能力を身に付けること。マルチメディア時代に必須の重大事である。

(怒髪)



【データ】

著者: 渡辺武達(同志社大学教授)
書名: 『メディア・リテラシー――情報を正しく読み解くための智恵』
発行: ダイヤモンド社
刊行年月日: 1997年1月17日
定価: 1600円[本体1553円]
ISBN4-478-19032-1