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続・21世紀の日米関係を考える

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座談会−−新段階に入った両国《上》



中山/平和憲法の理念を強く打ち出してこそ

小出/国連の機能を活性化させる対米協力に

玉井/紛争解決のために何ができるかの視点を


(1999年5月29日付)


 冷戦後の「同盟強化」をうたった一九九六年四月の日米安全保障共同宣言から三年―― 。新しい「日米防衛協力のための指針」(ガイドライン)関連法は五月二十四日、参院本 会議で可決、成立した。ここでは、先ごろ出版された『地球市民をめざす平和学』(第三 文明社)の共同執筆者でもある創価大学法学部の中山雅司助教授、同平和問題研究所の小 出稔助教授、玉井秀樹助教授に、六○年の安保条約改定以来の大きな変容を遂げ、新段階 に入った両国関係について語り合ってもらった。(司会・構成=野山智章記者、写真=松 井康直記者)



冷戦後の日米安保体制の再評価は

 ――今国会で成立したのは、(1)周辺事態法(2)在外邦人救出のために自衛艦の派遣を可能 とする改正自衛隊法(3)改正日米物品・役務相互提供協定(ACSA)。日本周辺で武力紛 争などが発生した場合に自衛隊などが米軍を支援する具体的内容を定めたものです。

 〈小出〉 やはり冷戦後の日米安保体制がどう変わってきたのか、その再評価、再定義 というところからすべて問題が発生してくると思うのです。冷戦期の対ソ同盟から、冷戦 後の多様な脅威に対応する二国間関係へという「同盟の変容」です。私自身はこの変容の 捉(とら)え方を、国連憲章でいう「地域的取り決め」を軸に考えています。

 そもそも、この概念は、国連の集団安全保障体制がうまく機能しない場合に暫定的に地 域的な集団安全保障で対応してもよいというものです。ところが実際の日米安保条約は、 国連憲章上の地域的取り決めの形を取りつつも、実質は仮想敵国を前提とした二国間同盟 だったと思うのです。

 それが冷戦後、より国連の掲げた集団安全保障体制を補完するものへ変質しようとして いるのではないか。

 〈中山〉 六〇年の日米安保条約は、五条で日本有事の際の共同防衛、六条で在日米軍 基地の提供を柱としてきた。七八年旧ガイドラインで分担体制への移行が盛り込まれたが 、周辺有事は今後の研究に委(ゆだ)ねるとして、実際は放置されてきた。転換点は冷戦 終結です。米ソの全面戦争とか、日本への武力攻撃の可能性が極めて低くなったなかで、 二国間の軍事同盟が基盤を失った。再定義は必然的だったと思います。

 憲法及び国際法から見た問題点は、日本として米国のアジア太平洋戦略に沿った協力を 行うにもかかわらず、法的には憲法九条があるために、日本防衛、言い換えれば個別的自 衛権という範疇(はんちゅう)で説明しなければならないことです。非常に苦しいつじつ ま合わせになっている。例えば、地理的概念かどうか曖昧(あいまい)な「周辺事態」や 、前線と後方を分ける「後方支援」のような論理操作が行われている。

 〈玉井〉 以前に、船橋洋一氏(朝日新聞編集委員)のリポート「日米安保再定義の全 解剖」(『世界』九六年五月号)を非常に面白く読んだのですが、それによれば、「ナイ ・リポート」が出る前に実は日本からアプローチがあって、いかに日本周辺に米軍を引き とめるかの理由探しに、官僚が日米安保の見直しを求めたと。外務省も防衛庁も、米軍の 撤退を恐れていた。

 米軍に撤退されては困るというところからスタートしている議論では限界がある。だか らこそ、仮に米軍が退いた後で東アジアに国連憲章が想定している集団安保体制を築くこ とができるかどうか、また、過渡的にはどうあるべきかという順序で考えるべきだ。

新ガイドライン法、周辺諸国の反応

 ――次に、新ガイドライン関連法の評価と成立を巡る周辺諸国の反応について議論をお 願いしたい。

 〈小出〉 多角的な安全保障対話の場と日米安保体制は、必ずしも二者択一的なものと 捉える必要はない。日米安保体制を冷戦後の多様な脅威に対応させることが、アセアン地 域フォーラム(ARF)その他の地域的な安保対話を妨げる要因になるとは思えない。

 周辺諸国の反応ですけれども、日本は「制限的な形でしか軍事的なコミットメント(介 入)はしません」というメッセージを明確にすればよい。中国に対しては、台湾問題は中 国の国内問題であるとの認識を明確にすべきですし、かつ中台関係は対話を基調に平和的 に解決されることを期待する旨も打ち出すべきです。

 〈中山〉 アジア諸国の反応は大きく二つに分かれています。一つは警戒するグループ 、もう一つは評価するグループ。

 中国に関しては、日米安保共同宣言では敵対視していないにもかかわらず、やはり非常 に警戒的です。韓国は、過去の日本の植民地支配の歴史があるので、日本の軍事大国化は 懸念するが、同時に北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)を抑止する点での評価もあって、 両方の立場がある。台湾、東南アジアはおおむね積極的に評価しているようです。

 大事な点は、アジアで信頼をかち取る上で、過去の戦争責任の問題、戦後補償に関して の態度をはっきりさせることです。私なりに結論を言わせていただくと、やはり平和憲法 の理念に基づいた日本のスタンスを、日米関係あるいはアジア太平洋地域における安全保 障に反映させていくべきです。理想論と言われても、あえて日本の意志と能力を信じ、訴 えていきたい。

 〈玉井〉 本来、戦後の日本は自衛隊のような戦力を持たない国として出発したはずだ った。それが解釈改憲によって自衛隊という戦力を増強してきた。今日、日本にこれだけ の軍事力があるのだからそれを使わない手はない、とあたかも所与の存在として自衛隊が あることから出発する議論はおかしい。

 もう一つ、これはよく言われることですが、東南アジアの政権担当者は、米軍が撤退す ると、中国が軍事的な覇権を確立して、それに対抗して日本が独自に軍事力を強化するの ではないか、と考え日米軍事同盟を支持している。それは日本の軍事力を大きくしたくな いということの表れでもあるし、いずれにしても日本に信頼を持てないということが問題 だと思います。

「船舶検査」の別法案化を巡って

 ――周辺事態法の政府原案は、自衛隊の活動として、国連決議に基づく経済制裁の実効 性を確保するための「船舶検査」を規定していたが、衆院での修正で船舶検査の条項は削 除され、別の法律を定めることで合意しました。

 〈中山〉 政府原案の「船舶検査」とは、米軍が行う海上における「臨検」とは異なり 、旗国の船長の許可を要し、警告弾の使用を禁じられ、軍艦にも近づけない……。要する に「強制的なものではなく、臨検とは違う」と。しかし、説得に応じない船舶がいた場合 、また、直接攻撃を受けた場合、武力行使にいたる可能性も捨てきれない。これは憲法上 の問題点です。

 国際法上の経済制裁は、憲章四一条に定められており、本来は国連安全保障理事会の合 意を得て行うものです。戦後の国連システムの下ではそれが筋です。

 更に気になるのは、湾岸戦争後の国際政治の流れをみていると、国連は米国の国益実現 のための“道具”となっている。それでいてコソボ情勢のように国連のお墨付きが得られ そうになければ国連離れをする。日本の国連中心主義は、外交指針の一つですが、国連決 議が正当な手続きを踏み、国際社会の合意を前提としたものなのかどうかを吟味する必要 がある。もっと言うと、米国への協力を正当化する根拠に国連が使われることには気をつ けるべきだ。

 〈小出〉 船舶検査は当然、国連決議に基づいて行うべきと思います。日米の専門家の 中には、東アジア有事の際には、中国の拒否権発動の蓋然性(がいぜんせい)が高く、国 連決議を要件とするのは非現実的だという人もいます。しかし、東アジアで中国の賛成を 得ていない実効性のある経済制裁がありえるのか。

 〈玉井〉 紛争解決の研究の立場から、船舶検査をやる意味について言うと、周辺で武 力衝突があった場合に、衝突地域に更に兵力や物資を送らないことは紛争の被害を抑え、 停戦に導くための重要な条件だ。

 だから、米軍の活動を補完するための船舶検査ではなく、日本周辺で有事が起こった場 合の平和維持機能の一部として、交戦国に兵力や物資を送らせない、紛争地域に兵力を増 強させないことです。

 そのためには国際的な取り決めが必要です。日本が主導して通常兵器の拡散防止の枠組 みを作りましたが、有事の際、厳密に兵器が紛争地域に流れない働きをするべきです。こ うした別の観点に基づき、日本が国際貢献する発想があってもよいのではないか。

 (この座談会の《下》は六月五日付に掲載予定)



【プロフィル】

 なかやま・まさし 1959年、兵庫県生まれ。創価大学大学院博士前期課程修了。専 攻は国際法。共著に『人権とは何か』、論文に「集団安全保障とヒューマン・セキュリテ ィー――国連による安全保障機能の再構築へ向けての覚書」など。

 こいで・みのる 1962年、大阪府生まれ。創価大学大学院博士前期課程修了。南カ リフォルニア大学で博士号取得。専攻は国際関係論。論文に「多国間主義(multil ateralism)の高まりとアジア太平洋地域」など。

 たまい・ひでき 1963年、神奈川県生まれ。創価大学大学院博士前期課程修了。専 攻は平和研究、紛争解決研究。論文に「紛争解決のプロセスと紛争変容」「非軍事化と『 平和圏』構築――沖縄の可能性」など。